
グローバル・ワン不動産投資法人で5.17%保有
第1章 報告書の内容
2025年9月30日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、上場REITであるグローバル・ワン不動産投資法人(8958)に関する大量保有報告書を提出した。
報告義務発生日は9月22日。
報告によれば、MUFGグループ(信託銀行・資産運用会社・証券会社を含む連名)の合計保有比率は5.17%に達している。
提出者の内訳
報告書はMUFG傘下の3社による連名で提出された。
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三菱UFJ信託銀行株式会社:13,970口(保有比率1.40%)、保有目的は「政策投資・純投資」
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三菱UFJアセットマネジメント株式会社:30,880口(同3.09%)、保有目的は「純投資」
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社:6,736口(同0.67%)、保有目的は「商品有価証券として保有」
この3社を合計すると51,586口(5.17%)となり、重要な安定株主層を形成している。
取引と契約の実態
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信託銀行の保有は政策投資の性格が強く、長期安定株主として機能する可能性が高い。
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アセットマネジメントの保有は投資信託を通じた「純投資」であり、マーケットの需給に基づいた運用が中心。貸株契約先にはSMBC日興証券(4口)、BNPパリバ証券(1,990口)が記載され、流動性供給の一翼も担う。
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証券会社の保有は「商品有価証券」としての位置づけであり、実際には自己勘定の売買や貸株・借株の調整を通じて短期的に動く可能性がある。貸株先・借株先には、SBI証券、MUFG系海外子会社、ABNアムロなどが含まれる。
これらの取引実態から、MUFGの保有は単なる安定株主というより、安定保有と市場流動性供給の二面性を兼ね備えたものといえる。
グローバル・ワン不動産投資法人の背景
グローバル・ワン不動産投資法人は、オフィス特化型のJ-REITとして知られ、主に東京都心部の大規模オフィスビルに投資している。
市況はコロナ後のテレワーク定着やオフィス需給の変化で揺れており、REIT市場全体も金利動向や不動産市況に大きく左右されている。
こうした中で、国内最大級の金融グループであるMUFGが5%を超える保有を示したことは、同REITの資本安定性を高めるシグナルとなる。
視点と論点
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政策投資としての意味
信託銀行の関与は、MUFGが不動産投資法人の安定株主としての役割を担っていることを示す。これは「系列安定株主」的な意味合いを持つ。 -
貸株・借株のリスク
一部は証券会社を通じて貸株・借株取引に供されており、形式的な保有と実際の議決権行使可能性にはギャップが生じる可能性がある。 -
REIT市場全体の脆弱性
金利上昇や不動産市況悪化が続けば、REIT価格は下落圧力を受けやすい。その中での大手金融グループの安定的保有は安心材料である一方、金融グループ依存の脆弱性も露呈している。
「安定」と「流動性供給」の二重性
MUFGによる5.17%の保有は、単なる投資ではなく日本の金融グループがREIT市場における“安定株主”と“市場流動性の供給者”を兼ねる構造を示している。
──これは投資家にとって安心材料か。それとも金融寡占のリスクか。
グローバル・ワン不動産投資法人をめぐるこの保有構造は、日本のREIT市場が抱える二面性を浮き彫りにしている。

