
中堅企業支援とIR改革に挑む“対話型資本”
第1章 報告書が示す事実
2025年10月22日、fundnote株式会社(代表取締役社長:渡辺克真)が、株式会社エフアンドエム(証券コード4771、東証スタンダード上場)の株式を5.80%保有していることが明らかになった。
報告義務発生日は10月15日で、保有株数は911,400株。
fundnoteはこの保有を投資信託の信託財産の運用として行っており、報告書の保有目的欄では次のように明記されている。
「株式会社Kaihouの投資助言に基づき投資信託の信託財産の運用のため保有。スチュワードシップ・コードに則り建設的な対話により、IR・資本効率・ガバナンスの高度化と企業価値向上を促す。」
さらに、場合によっては「重要提案行為を行う」へと保有目的を変更する可能性を明記。
これは単なる運用ではなく、企業経営への積極的な関与を前提としたアクティブオーナーシップの姿勢を示すものだ。
fundnoteとは?
fundnote株式会社は2021年8月設立。
港区芝のクロスオフィス三田に拠点を構え、金融商品取引法に基づく投資運用業および第二種金融商品取引業の登録を持つ。
代表の渡辺克真氏は、国内外のアセットマネジメント業界出身であり、「投資家と企業をつなぐ対話型プラットフォーム」を標榜する。
fundnoteの特徴は以下の3点に集約される。
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ESG・スチュワードシップに基づく中長期運用
→ 単なる株価上昇ではなく、企業価値の内的成長を重視。 -
IR・ガバナンス支援型投資
→ 経営陣と直接対話し、資本効率・IR体制・開示水準の改善を促す。 -
中堅企業を対象とした社会的投資
→ 大企業よりも潜在成長力の高い地方・中小上場企業に焦点を当てる。
このように、fundnoteは「アクティビストでもなく、従来型の運用会社でもない」
“中間地帯に立つ新しいタイプの資本”として台頭している。
対象企業エフアンドエムの背景
エフアンドエムは、中小企業向けに経営・人事・財務支援サービスを提供する総合支援企業。
主力は社会保険労務士事務所や会計事務所を対象としたアウトソーシング支援「F&M Club」およびクラウド型業務支援ツール。
近年では、
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クラウド労務管理「F&M Payroll」
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中小企業のDX推進支援
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士業連携によるデータプラットフォーム構築
などを推進しており、安定的な収益基盤を持ちながらも、IR活動や情報開示の分野では改善余地があると指摘されていた。
fundnoteの関与は、まさにこの「IR改革」×「成長支援」の両輪を狙った動きだといえる。
保有の構造
Kaihouとの連携運用
今回の報告では、fundnoteが株式会社Kaihouの投資助言に基づき運用している点が注目される。
Kaihouは独立系投資助言会社で、企業価値評価と対話型アドバイザリーを専門とするファーム。
このスキームは、
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Kaihou:銘柄選定・経営対話助言を担当
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fundnote:信託財産の実際の運用・スチュワード活動を実行
という形で役割を分担しており、「助言と実行を分離したガバナンス型運用」となっている。
この構造により、投資判断の透明性と利益相反リスクの低減が図られている。
視点と論点
“地方・中堅企業アクティビズム”の新潮流
東京大企業を対象とする従来型アクティビズムとは異なり、fundnoteは地方や中堅企業に焦点を当てる。
この流れは、地域資本主義の再評価と密接に関係している。
IR・ガバナンス改革の実務介入
fundnoteの活動は、株主総会での要求ではなく、対話と助言を通じた実務的改革支援が主軸。
アクティビズムの“第2世代”とも呼べる。
スチュワードシップコードの実践型運用
制度遵守だけでなく、現場での改善を促す「対話のエンジンとしての投資」が機能し始めている。
「企業と資本が共に育つ」新時代
fundnoteによるエフアンドエム株の5.80%保有は、数字以上の意味を持つ。
それは、日本の中堅企業に資本の力で“成長支援”を組み込む新しい形のスチュワードシップ活動である。
資本とは、企業を責めるためのものではなく、共に成長するための手段。
投資を「対話と支援の言語」に変えようとする試みが、ここにある。
静かながら確かな改革の波が、地方・中堅企業の現場から始まりつつある。

