シティインデックスとシンガポール系投資家がDeNA株5.12%を取得

“共同戦略型アクティビズム”の胎動

報告書が示す事実

2025年10月27日、株式会社シティインデックスイレブンス(代表取締役:福島啓修)が、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA/証券コード2432、東証プライム上場)の株式を5.12%保有していることが明らかになった。

報告義務発生日は10月20日で、共同保有株数は6,257,800株に達する。

提出者は以下の3者による共同保有構造となっている。

保有者 保有株数 持株比率
株式会社シティインデックスイレブンス 100株 0.00%
野村 絢(シンガポール在住) 4,102,100株 3.36%
株式会社シティインデックスファースト 2,155,600株 1.76%
合計 6,257,800株 5.12%

報告書には「投資および状況に応じて経営陣への助言・重要提案行為等を行う」との文言が明記されており、アクティビズム的要素を含む戦略投資であることが分かる。

シティインデックスの素性

投資と不動産をまたぐ戦略集団

シティインデックスイレブンスは2009年設立の投資会社で、所在地は東京都渋谷区南平台町。

代表の福島啓修氏は、同系列のファーストやテンといった関連法人群を率いる人物であり、上場企業への資本参加と不動産投資を融合させたマルチアセット戦略を展開している。

事業内容は

  1. 投資業

  2. 経営コンサルティング

  3. 不動産の所有・賃貸・売買
    とされ、過去には複数の上場企業への資本参入実績を持つ。

今回の報告書においても、取得資金の多くが自己資金9,259万円+野村氏からの借入4.98億円という形で構成されており、実質的には国内投資会社と海外個人資本の連合体による共同戦略と見られる。

共同保有者・野村絢氏の存在

共同保有者の野村絢氏は、シンガポール在住の個人投資家であり、Isamu Holdings Pte. Ltd. のマネージングディレクターを務める。

報告書によれば、氏の住所はブキットタンガルロード、勤務先は111 Somerset Roadに位置する金融関連企業である。

野村氏は過去にも日本上場企業への大規模投資を行っており、特にテクノロジー・エンタメ・IT関連銘柄への資本参加が多い。

今回のDeNA株取得も、東南アジアの資本が日本の知的財産・コンテンツ産業に本格参入する動きの一環と捉えられる。

取引の軌跡

2カ月で6百万株超を積み上げ

報告書の取引履歴によると、2025年8月22日から10月20日までの間、シティインデックスファーストと野村氏はほぼ毎営業日、市場内で買い増しを実施している。

代表的な取得は以下の通り

  • 8月25日:22万6,900株

  • 8月28日:57万9,900株

  • 9月3日:21万2,700株

  • 10月2日:17万6,600株

  • 10月6日:49万6,900株

  • 10月14日:34万4,800株

これらは市場価格の動きを見ながら分散取得した典型的な戦略買いであり、

株価を押し上げることなく支配水準を確保する「静かな買い上げ戦術」が取られている。

DeNAの構造改革と市場再評価

DeNAはモバイルゲーム黎明期を牽引したIT企業だが、現在はスポーツ・ヘルスケア・AI・自治体DXなど多角化を進めている。

売上の安定性は高いが、株価はピーク時の半分以下に低迷。PBR(株価純資産倍率)は1倍を割る水準にある。

この状況を踏まえ、

  • 非中核事業の整理(特にエンタメ事業の再構成)

  • 自社株買い・資本効率改善

  • 経営陣への株主リターン強化要求
    など、企業価値向上を目的とする“建設的アクティビズム”が展開される可能性が高い。

特にシティインデックスグループは、これまでも上場企業のガバナンス改善を提案してきた実績があり、

DeNAに対しても「市場で埋もれた知的資産の再評価」を促す動きが予想される。

視点と論点

国内投資会社と東南アジア資本の連携モデル

今回のケースは、日本の中堅投資会社が海外個人投資家と手を組み、共同で上場企業に関与する新しい形。

DeNAの“第二の創業期”に外部株主が関与

創業来のモバイルゲーム中心の構造から転換しつつある同社にとって、外部資本の監視と支援は経営変革を後押しする可能性がある。

“静かなアクティビズム”の広がり

直接的な敵対行動ではなく、提案や対話を通じて企業改革を促す「協調的アクティビズム」が拡大している。

“渋谷発×シンガポール資本”が動かす日本IT企業の未来

株式会社シティインデックスイレブンスと野村絢氏によるDeNA株5.12%の共同保有は、日本のIT・コンテンツ企業に対する新しいタイプの資本介入を象徴している。

それは、敵対ではなく“共創”を志向するアクティブ・オーナーシップの形。

シンガポール資本が東京・渋谷の企業に手を伸ばすこの動きは、

グローバルマネーが日本の知的産業を再び評価し始めた兆候でもある。

DeNAの再成長は、もはや内部改革だけではない。

そこには、静かに企業価値を磨き上げる“外部の目”が入っている。

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