
大量保有報告書の提出を受けて
2025年11月11日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、
英国のZennor Asset Management LLP(ゼナー・アセット・マネジメント)が
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(東証プライム・6080)の株式を5.07%保有したことが明らかになった。
提出代理人は東京都港区赤坂のサウスゲイト法律事務所・外国法共同事業。
報告義務発生日は2025年11月4日とされ、Zennorはこの時点で160万株超を取得していた。
英国Zennor Asset Managementとは
Zennor Asset Management LLPは、2002年に設立された英国ロンドン拠点の投資顧問会社である。
代表者はサチン・パテル氏(Chief Operating Officer)。
同社はロンドンの高級金融街、デューク・オブ・ヨーク・スクエアに本店を構える。
事業内容は投資一任契約に基づく顧客資産の運用。
しかし、報告書には次のような文言が記載されている。
「状況に応じて、運営及び資本の効率化に向けて、発行者の経営陣との意見交換や、重要提案行為等を行う場合がある。」
この一文が示すのは、単なるファンドではなく、アクティビスト的側面を持つ英国型投資家であるという事実だ。
運用資金の内訳も特徴的で、自己資金ゼロ・全額顧客資金(約4億9,600万円)による取得である。
すなわちZennorは、顧客資産を介して日本企業の資本構造に踏み込む“代理型アクティビズム”を展開していると見られる。
9月から11月にかけての計画的取得
報告書によると、Zennorは2025年9月以降、断続的に株式を買い増ししている。
取得単価はおおむね3,000〜3,200円台で推移し、株価調整局面を正確に捉えている。
特筆すべきは、報告義務発生日(11月4日)にも市場内外で6万株以上を取得している点だ。
形式上は長期投資を装いながらも、実際には5%超到達を明確に意図した最終的な集中取得が行われた可能性が高い。
M&Aキャピタルパートナーズへの圧力
M&Aキャピタルパートナーズは、中堅・中小企業の事業承継支援を主軸とするM&A仲介企業。
同業の上場競合が増加する中で、収益性の鈍化・営業利益率の低下・ROEの減少が続いている。
こうした中でZennorが「資本効率化」を名目に保有を進めることは、
経営陣に対する静かな警鐘と読むべきだろう。
アクティビストの手法は、最初は「対話」から始まり、成果が乏しければ「提案」や「公開書簡」へと発展する。
Zennorの5%ライン突破は、その第一段階のシグナルである。
サウスゲイト法律事務所の存在
今回、報告書の提出を代行したサウスゲイト法律事務所は、
英国・米国双方の法制度に精通する外資ファンドの「日本進出ゲートウェイ」として知られる。
これまでにも複数の外国籍ファンド案件で代理人を務めており、
外資系機関の日本株介入のローカル実務を一手に支えるハブ的存在といえる。
Zennorの報告にも同事務所が名を連ねたことは、
単発の投資ではなく、中長期的な日本市場関与の布石である可能性を示している。
アクティビズムの再上陸と日本企業の覚悟
ZennorのM&Aキャピタルパートナーズ株式取得は、
「英国系アクティビストの静かな再上陸」を象徴する出来事である。
形式的には投資一任契約に基づく顧客資金運用だが、
文面には「意見交換・提案行為」という能動的介入の余地が明記されている。
これは、単なる資産運用ファンドではなく、
企業統治のあり方そのものを問う外圧の萌芽である。
日本企業が求められているのは、
“閉じた株主構造”からの脱却と、
説明責任を伴う透明な資本政策への移行である。
資本市場の主導権は誰の手に
Zennorの保有比率5.07%は、単なる数字ではない。
それは、株主として声を上げ得る立場を確立したことを意味する。
M&Aキャピタルパートナーズが今後の株主対話をどう設計するか。
その対応は、企業自身の資本哲学を市場に問うリトマス試験紙となるだろう。

