fundnote、ROXX株7.56%を取得

“データ×人材”領域へ踏み出す国産アクティブ運用の真意

大量保有報告書の提出

2025年11月10日、fundnote株式会社が関東財務局に提出した大量保有報告書により、
ROXX株式会社(東証グロース・241A)の株式を7.56%保有していることが明らかとなった。

報告義務発生日は2025年10月31日。保有株数は549,747株、発行済株式総数7,273,170株に対する比率である。
提出者は単独(共同保有者なし)であり、報告書は「特例対象株券等」として提出されている。

注目すべきは、fundnoteが直前にも日本シイエムケイ(6958)に対する6.66%保有を開示したばかりである点だ。

つまり同社は、製造業から人材・データ領域へと投資軸を拡張している

この動きは、単なる分散ではなく、日本市場の「構造的再生」に焦点を当てた一貫した資本行動である。

fundnote株式会社とは

対話型アクティブ・オーナーの原型

fundnote株式会社は、2021年設立の新興アクティブ運用会社である。

代表は渡辺克真氏。本社は東京都港区芝のクロスオフィス三田に構え、
投資運用業・第二種金融商品取引業の登録を受ける独立系投資運用事業者だ。

同社の投資哲学は、外資型アクティビストのような敵対的手法ではなく、
「対話と構造改革を併走させる国内志向型アクティビズム」にある。

つまり、経営陣と建設的に対話しながらも、必要に応じて議決権を用い、
企業価値向上のための“行動する運用者”として関与する。

運用戦略の中核は以下の3分野に置かれている。

  1. 製造業の資本効率改革(ROE・ROIC改善)

  2. IT・HR領域のデータ資産活用支援

  3. 企業統治・IR開示の高度化支援

今回のROXX株取得は、このうち「データと人材の橋渡し」領域への進出として位置づけられる。

fundnoteは、国内市場の「情報資本の低効率性」を次の改革対象として明確に捉えている。

ROXX株式会社とは

人材データベース時代の中核企業

ROXX株式会社は、人材紹介・採用支援のDX化を推進するテクノロジー企業。

主力サービスは、転職エージェントや企業向けに提供する「agent bank」などのマッチングプラットフォームで、
人材紹介事業をクラウドベースに変革した“採用テック”の旗手である。

人材不足が構造化する中で、同社は“情報インフラ”としての価値を急速に高めており、
近年はデータサイエンスを活用した企業・人材双方のレコメンドアルゴリズムの高度化を進めている。

その一方で、営業投資負担や開発費先行により、財務的には赤字が続く局面にある。

ここにfundnoteが関与したことは、資本効率とガバナンス再設計を狙う関与型投資である可能性が高い。

保有目的

「投資信託」および「投資事業有限責任組合」経由の構造

報告書によれば、fundnoteはROXX株式を次の形態で保有している。

「投資信託」もしくは「当社が無限責任組合員になっている投資事業有限責任組合」の運用として保有している

これは、同社が複数の投資ビークルを用いてリスク分散型運用を行っていることを意味する。

つまり、自己勘定ではなく顧客資産を基盤にしたファンド・オブ・ファンズ型のアクティブ運用であり、
企業とのエンゲージメント(対話)においても、受益者利益を最上位に置いた行動原理を採っている。

この構造は、英国のHarris Associatesや米国のValueActが用いる「信託型アクティビズム」に近い。
外資系とは異なり、国内の法規制内で最大限の関与を可能にする制度設計が特徴である。

7.56%という数字の意味

グロース市場における“存在感の臨界点”

fundnoteがROXXにおいて保有する7.56%という比率は、グロース市場では極めて大きい。

一般的に、上場グロース企業では創業者・役員等が過半を保有しており、
外部投資家が5%を超えることはまれである。

そのため、この数字は「経営との対話を無視できない水準」に達している。

ROXXの資本政策や成長戦略の方向性に、
fundnoteが
建設的介入を行うためのポジションを確立したと見るべきだ。

この水準は、いわゆる「アクティブ・ステークホルダー・レンジ」であり、
株主提案の前段階にあたる“対話実効区間”といわれる領域である。

fundnoteがROXXに見る「資本再構築の可能性」

ROXXのビジネスモデルは、人的資本とデータ資本の融合によって成り立つ。

しかし、上場後のキャッシュフローや財務構造は未成熟で、
営業キャッシュフローのマイナス継続、ROEの低位安定、希薄化リスクなどの課題を抱えている。

fundnoteが注目するのは、こうした短期的赤字ではなく、
「情報資産を企業価値へ転換できる構造」にあると考えられる。

同社はこれまでの製造業志向(日本シイエムケイなど)から一歩進み、
人的資本時代における情報資本効率化の実験場としてROXXを選んだ可能性が高い。

“モノからヒトへ”動くアクティブ資本

fundnoteの連続的な大量保有開示には、明確なストーリーがある。

それは、モノ(製造業)からヒト(人材・情報産業)へと軸を移し、
日本経済の「資本効率の盲点」に光を当てる試みである。

同社の手法は敵対的ではないが、
資本政策・IR・ガバナンスを軸に企業経営へ緩やかに影響を及ぼす“静かな変革者”である。

ROXXへの7.56%取得は、データ駆動型社会における次の資本改革実験としての意味を持つ。

国産アクティビズムの第2章へ

fundnoteの連続保有報告は、
外資アクティビストの手法を模倣するのではなく、
日本の制度・文化・市場構造に適応した「国産型アクティビズム」の形成過程である。

ROXXはその初期舞台であり、同社の“対話”がどのように進化していくかは、
今後の国内エンゲージメント・ファンドの方向性を決める試金石となるだろう。

おすすめの記事