
フィンテック優良株を狙う海外勢の本気度
オーストラリアの投資会社 GCQ Funds Management Pty Ltd が、マネーフォワード(3994)の保有比率を 5.14% → 6.18% に増やした。
提出されたのは「変更報告書 No.1」。
変更理由は 1%以上の保有増加。
驚くべき点は、この6.18%が まったくの市場内取引の積み上げによって形成された比率 であることだ。
市場外の一撃はゼロ。
すべてが “日々の連続買い” によって作られた“本気のポジション形成”だ。
これは、マネーフォワードという日本のフィンテック成長企業に対して、海外から 「長期資産として評価され始めた」という構造的変化を示すサインでもある。
GCQ Funds Managementとは
GCQ Funds Management(GCQ)は、
-
オーストラリア・シドニー
-
2021年設立(令和3年10月27日)
-
代表:ダグラス・ヒュー・タイナン
-
海外では中小型株を巧みに扱う“アクティブ運用者”として知られる
日本ではほぼ無名の存在だが、実態は 国際小型株の“成長サーチャー” に近い。
彼らの投資基準は明確だ。
-
成長市場
-
営業利益が拡大し続けている
-
財務が安定している
-
将来の市場シェア獲得余地が大きい
-
そして何より「株価がまだ本質を織り込んでいない」
まさにマネーフォワードに一致する。
取引の主体はすべて “顧客の資金”。
提出書にも
「顧客との投資一任契約に基づいて投資している」(p.5 取得資金欄)
と明記されており、明確に長期リターンを求める資金 が流入している。
60日間で見せた「外国勢の積み方」
提出書類(取引履歴)を見ると、GCQのスタンスは極めて明快だった。
▼ 連日の市場内買い
-
9/22:6,600株
-
9/24:18,000株
-
9/25:1,300株
-
9/26:2,900株
-
9/29:1,500株
-
…(省略)…
-
10/27:303,100株(0.55%)
-
10/31:111,000株(0.20%)
-
11/11:106,200株(0.19%)
-
11/18:125,900株(0.23%)
-
11/20:113,700株(0.20%)
大口は散発的にあるが、基本は 毎日数千〜数万株の淡々とした積み増し。
市場外でのブロック買いは一切なし。
つまり、
板の厚みを読みながら、需要を壊さずに“市場内で静かに取った”6%
である。
これは機関投資家の中でも「本当に長期で保有したい時の買い方」 だ。
6.18%という比率の意味
マネーフォワードは、
-
SaaS型収益モデル
-
中小企業クラウド会計の国内トップ
-
成長性は極めて高い
-
時価総額・流動性も十分
こうした企業に対し、海外勢が5〜7%台を形成すると、意味は大きく変わる。
● ① 長期資本の流入が始まった
一発の市場外買いではなく、市場内での積み上げである点が重要。
これは 短期売買ではなく“腰を据えた買い”。
● ② 外国人保有比率が上昇し、株主構造が変わり始めた
マネーフォワードは海外ファンドの注目が年々高まっているが、6%超を取るのは容易ではない。
明確な意思が必要だ。
● ③ 将来の大口化の土台
SaaS企業には“持たれて初めて気付く価値”がある。
海外勢は決算モデルを評価し、中期的に10%ラインを狙う可能性を否定できない。
なぜ今マネーフォワードなのか
GCQがこのタイミングで比率を上げた背景には、“構造的な日本市場の遅れ”がある。
マネーフォワードは
-
解約率の低さ
-
ARRの安定成長
-
BtoB SaaSとしての高い参入障壁
を持つにも関わらず、国内では未だに「利益が薄い」「株価が高い」といった誤解がつきまとう。
海外勢の視点は違う。
-
SaaSは先行投資フェーズが終われば利益率が跳ねる
-
成長率が鈍化しない企業は希少
-
会計・請求・経費精算といった“事業の中枢”を押さえている
-
日本の中小企業DXはまだ入口に過ぎない
つまり、
「本質価値の割に株価が安い」
という評価が海外で広がりつつある。
GCQはそれを最も早く行動に移した投資家のひとつだ。
論評
日本のSaaSは海外の方が理解が深い
今回の6.18%取得が示す最大のポイントは、
日本のSaaS企業の価値は、国内投資家より海外投資家の方が先に理解している
という残酷な構造だ。
-
SaaSモデル
-
ARR
-
契約ベース収益
-
LTV/CAC
-
オンボーディング戦略
-
継続率
これらの評価指標は、海外では当たり前だが国内ではまだ浸透しきっていない。
その“情報の非対称性”を、GCQは正確に突いた。
6%という数字は小さく見えるかもしれないが、市場内でここまで積むには相当な意思がいる。
これはマネーフォワードにとって「海外長期資本が本格的に入り始めたサイン」であり、日本市場にとっては「成長企業を国内で評価できていない」構造の露呈に他ならない。
マネーフォワードの株主構造は、今後さらに“外資比率の高まり”という変化を迎えるだろう。

