
なぜBitcoin Japanなのか
2025年12月、東証スタンダード上場の Bitcoin Japan株式会社(8105) を巡り、一通の大量保有報告書が提出された。
提出者は マッコーリー・バンク・リミテッド。
報告書の表面だけを見れば、「純投資」「重要提案行為なし」という、極めて事務的な内容である。
しかし論評社としては、この報告書を“単なる大株主出現”として処理すること自体が、最大の誤りだと考える。
なぜなら、この案件は「誰が、どの会社を、どの構造で押さえに来たのか」を理解しなければ、何も見えてこないからだ。
まず押さえるべき前提
マッコーリーとは「株主」ではなく「構造の設計者」である
マッコーリーは、いわゆる短期売買やテーマ投資を主戦場とする投資銀行ではない。
このグループの本質は、
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インフラ
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エネルギー
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金融基盤
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制度と規制の“隙間”
を読み込み、「長期で支配力を持てる構造」を先に作ることにある。
世界各国で繰り返されてきたマッコーリーの手法は一貫している。
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表向きは「金融投資」
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実態は「出口まで設計された関与」
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株主として声を荒げることはほとんどない
その代わり、経営が“無視できない位置”を、静かに、合法的に確保する。
マッコーリーが選んだのがBitcoin Japan
今回の大量保有で、マッコーリーが確保したポジションは以下の通りだ。
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普通株式:2,842,900株
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新株予約権:14,050,000株相当
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合計保有株式等:16,892,900株
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潜在株式を含めた保有割合:22.92%
重要なのは、この22.92%が“株を買い集めた結果”ではないという点である。
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普通株は借株
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核心は発行体と直接結ばれた新株予約権契約
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行使価格は1株29円
これは市場参加者が想定する「投資行動」ではない。
最初から“構造として影響力を持つ”ことを前提にした入り方だ。
29円という数字が語る、交渉力の非対称性
論評社が最も重く見るのは、この29円という行使価格である。
ここに、すべてが詰まっている。
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この価格で誰が得をするのか
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希薄化の負担を誰が引き受けるのか
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株価形成の主導権は誰に移るのか
仮に新株予約権が段階的に行使されれば、市場はもはや「企業価値」ではなく、行使ペースと希薄化スケジュールを見る相場になる。
これは投資ではない。
価格決定権の移転である。
「純投資」という言葉が隠す、本当の影響力
報告書では、保有目的は明確に「純投資」とされている。
重要提案行為も「該当なし」。
だが、論評社はここに問いを投げる。
22.92%を握る株主は、本当に“経営に関与しない存在”なのか。
現実には、
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増資の是非
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M&Aの条件
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事業売却の判断
こうした局面で、22.92%の存在は言葉を発しなくても、意思決定を縛る。
これはアクティビズムよりも、はるかに洗練された関与の形だ。
借株ネットワークが示す「一社案件ではない」可能性
普通株式2,842,900株は、複数の金融機関からの借株によって構成されている。
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SMBC日興証券
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SBI証券
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楽天証券
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BAKKT OPCO Holdings LLC
この顔ぶれは偶然ではない。
最初から一定の流動性・出口・再編を見据えた布陣である可能性が高い。
核心的視点
これは「支配の準備」ではないか
論評社は断定しない。
しかし、こう問うことはできる。
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なぜこのタイミングなのか
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なぜ29円なのか
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なぜ22.92%なのか
この3点が偶然重なる確率は、決して高くない。
むしろこれは、日本市場の制度が許す最大限の“見えにくい支配”を、教科書通りに実行した事例と見る方が自然だ。
論評
問われているのはBitcoin Japanではない
問われているのは、日本市場そのものだ。
この件で本当に問われるべきなのは、Bitcoin Japanの経営姿勢だけではない。
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潜在株式を含めた支配がどこまで可視化されているのか
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個人投資家は、この構造を理解できているのか
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「純投資」という言葉が、説明責任を免罪していないか
22.92%は、単なる数字ではない。
それは、日本の上場市場が抱える“構造の甘さ”を映す鏡である。

