AAGS InvestmentがラクーンHD株25.83%を取得

新株予約権を通じた“実質支配”はどこまで及ぶのか

2025年12月24日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、ケイマン諸島籍の投資会社 AAGS Investment, Inc. が、東証プライム上場の 株式会社ラクーンホールディングス の株式等を 25.83% 保有していることが明らかになった。

保有目的は「純投資」、重要提案行為等は「該当事項なし」。

しかし、本件の取得内容を精査すると、単なる株式投資とは言い難い。

新株予約権と転換社債型新株予約権付社債を組み合わせた、実質的な支配力確保スキームが構築されている。

25.83%という数字の重み

今回の保有割合 25.83% は、単なる大株主の域を超える。

  • 特別決議を単独で成立させる水準ではない

  • しかし、議決権ベースで経営判断に強い影響力を及ぼす

  • 市場から見れば「事実上の筆頭株主」に近い存在感

しかもこの比率は、市場で買い集めた結果ではなく、第三者割当による新株予約権・転換社債型新株予約権付社債を通じて形成されている点が決定的に異なる。

大量保有報告書の事実整理

大量保有報告書に記載された主な内容は以下の通りである。

  • 報告義務発生日:2025年12月17日

  • 提出日:2025年12月24日

  • 提出者:AAGS Investment, Inc.(ケイマン諸島法人)

  • 発行体:株式会社ラクーンホールディングス

  • 保有株券等の数:7,751,800株相当

  • 保有割合:25.83%

  • 保有内訳:

    • 第18回新株予約権(4,651,100株相当)

    • 第2回無担保転換社債型新株予約権付社債(3,100,700株相当)

  • 保有目的:純投資

  • 重要提案行為等:該当事項なし

形式上は「純投資」とされているが、保有手段の大半が潜在株式である点は極めて重要だ。

AAGS Investmentとは

PEファンド型スキームの実像

AAGS Investment, Inc.は、ケイマン諸島に設立された投資ビークルであり、実務上は アドバンテッジパートナーズ が関与するファンドスキームの一部と位置付けられる。

この種の投資主体に共通する特徴は、

  • 株式市場での分散取得ではなく

  • 第三者割当や新株予約権を通じた影響力確保

  • 経営関与を前提とした中長期投資

  • 資本政策と事業提携を一体で設計する点

にある。

つまり、AAGSは「静かな純投資家」ではなく、「資本構造に直接入り込む投資主体」と捉えるのが妥当だ。

ラクーンホールディングスとは

ラクーンホールディングスは、BtoB向けEC支援、決済、保証といったプラットフォーム型ビジネスを展開する企業で、安定した収益基盤を持つ一方、成長投資や事業提携を通じた次の成長段階が模索されてきた。

特徴を整理すると、

  • ストック性の高いビジネスモデル

  • 財務基盤は比較的安定

  • さらなる成長には外部資本・提携の活用余地

という姿が浮かび上がる。

なぜラクーンHDだったのか

AAGS側の視点に立てば、ラクーンHDは極めて合理的な投資対象である。

  • 安定したキャッシュフロー

  • プライム市場上場という信用力

  • 事業提携と資本注入を組み合わせやすい構造

この条件が揃えば、新株予約権を通じて段階的に影響力を高めるスキームが成立する。

実際、本件では

  • 行使制限期間

  • 株価・出来高条件

  • 上場廃止・支配権変動時の取得請求権

など、投資家側のリスクを極力抑えた契約条項が細かく設定されている。

株ではなく「権利」による支配

本件の本質は、普通株の大量取得ではない。

  • 新株予約権

  • 転換社債型新株予約権付社債

という「権利」を通じて、
将来の希薄化と引き換えに、現在の影響力を確保する構造が採られている。

これは、既存株主にとって

  • 目に見えにくい

  • しかし確実に効いてくる

支配の形だ。

「純投資」という説明はどこまで成立するか

書面上の保有目的は「純投資」であり、重要提案行為等は「該当事項なし」とされている。
しかし、

  • 25%超の潜在的持分

  • 経営・事業提携を前提とした契約条項

  • 行使・取得請求に関する詳細な条件設定

これらを総合すると、本件は
「何もしない投資家」ではなく、「いつでも主導権を取れる立場」
を確保した投資と見るのが自然だ。


論評

プライム市場で進む“見えにくい支配”

本件は、グロース市場ではなくプライム市場企業において、新株予約権スキームを通じた実質支配が進行している点で、より重い意味を持つ。

株主構成は形式上分散していても、資本政策の中枢に特定の投資家が入り込むことで、企業の意思決定は大きく方向付けられる。

問われているのは、AAGSの戦略だけではない。

こうしたスキームを許容し、十分に可視化できていない市場と制度の側である。

ラクーンホールディングスにおけるこの資本構造が、成長の推進力となるのか、それとも統治上の新たな課題を生むのか。

この25.83%は、日本市場に突きつけられた一つの問いだ。

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