
新世代運用会社の「対話型関与」はどこへ向かうのか
2026年1月9日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、国内の新興運用会社 fundnote株式会社 が、東証上場の ヤマト株式会社 の株式を 5.10% 保有していることが明らかになった。
保有目的には、「スチュワードシップ・コードに則り、建設的な対話を通じてIR・資本効率・ガバナンスの高度化と企業価値向上を促す」と明記されており、一般的な純投資とは一線を画す姿勢が示されている。
本件は、アクティビズムとも単なるパッシブ運用とも異なる、“対話型関与”を前提とした新しい株主像を浮かび上がらせる事例と言える。
5.10%という「対話の起点」
今回の保有割合 5.10% は、大量保有報告書の提出義務が生じる最低ラインをわずかに上回る水準だ。
この比率は、
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経営陣に対して正式に意見を述べる立場を確保し
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市場に対して「責任ある株主」としての存在を示し
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しかし、いきなり経営権を巡る緊張関係を作らない
という、対話型・スチュワードシップ型投資における典型的な入口ラインである。
fundnoteは、まずこの水準で
「監視し、対話し、必要であれば次の手段を取る」
という立ち位置を明確にした形だ。
大量保有報告書の事実整理
提出書類に基づく主な内容は以下の通りである。
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報告義務発生日:2025年12月30日
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提出日:2026年1月9日
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提出者:fundnote株式会社
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発行体:ヤマト株式会社
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保有株数:1,230,400株
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保有割合:5.10%
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保有目的:
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投資助言会社 Kaihou の助言に基づく信託財産の運用
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スチュワードシップ・コードに則った建設的対話
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受益者利益保全のため、将来的に重要提案行為へ変更する可能性あり
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取得は普通株式のみで、新株予約権や転換社債といった支配力を強める金融手段は用いられていない。
fundnoteとは
fundnoteは2021年設立の比較的新しい資産運用会社で、スチュワードシップ責任を前面に出した運用姿勢を特徴としている。
同社のスタンスを整理すると、
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短期的な株価変動を狙う運用ではない
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経営との建設的対話を通じた価値向上を重視
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必要に応じて、保有目的を「重要提案行為」へ切り替える柔軟性
という点が際立つ。
これは、「黙って持つ株主」と「敵対的アクティビスト」の中間に位置する存在と表現することができる。
ヤマトという企業の現在地
ヤマトは、建設関連事業を中心とする老舗企業であり、安定した事業基盤を持つ一方で、市場からはしばしば
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資本効率の低さ
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IR発信の弱さ
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ガバナンスの形式化
といった課題を指摘されてきた。
これは、スチュワードシップ型投資家から見れば、「対話によって改善余地が見込める企業」と映る可能性が高い。
なぜヤマトだったのか
fundnoteの視点に立てば、ヤマトは理にかなった投資対象だ。
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事業は安定している
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しかし市場評価は必ずしも高くない
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改善余地がIR・資本政策・ガバナンスに残されている
この条件が揃えば、過激な手法を使わずとも、対話だけで企業価値向上を狙える余地が生まれる。
5%超という持分は、その議論を経営陣と正式に行うための「最低限の発言権」に他ならない。
「純投資」と「重要提案行為」の境界線
本件で特筆すべきは、保有目的に「受益者利益を保全するため、保有目的を重要提案行使に変更する場合がある」と明記されている点だ。
これは、
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現時点では対話を重視する
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しかし、対話が機能しなければ次の手段を排除しない
という、条件付きの穏健姿勢を意味する。
言い換えれば、経営側の対応次第で、この5.10%は“静かな存在”にも“圧力”にも変わり得る。
論評
本件は、ヤマト一社の話にとどまらない。
日本市場において、
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パッシブでもない
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敵対的でもない
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しかし責任を放棄しない
という、「第三の株主像」が現実のものになりつつあることを示している。
fundnoteの5.10%は、単なる持株比率ではない。
それは、対話と規律を両立させようとする新しい運用哲学の表明である。
ヤマトがこの株主とどう向き合うのか。
その姿勢次第で、この5%は
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何事も起きない数字にも
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経営を変える起点にも
なり得る。
