アヤル・ファースト・インベストメントがネクソン株10.71%を取得

サウジ系投資会社が示す「静かな大口保有」の意味

2026年1月9日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、サウジアラビアを拠点とする投資会社 Ayar First Investment Company が、株式会社ネクソン の株式を 10.71% 保有していることが明らかになった。

保有目的は「純投資」、重要提案行為等は「該当事項なし」。

しかし、市場外取引による一括取得で10%超を押さえるという手法は、単なるポートフォリオ投資としてはやや異質だ。

本件は、中東マネーによる日本コンテンツ企業への長期的コミットメントを読み解く必要がある事例といえる。

10.71%という「明確な存在感」

10%を超える持分は、形式上は支配株主に該当しないものの、

  • 主要株主として強い存在感を持つ

  • 経営陣にとって無視できない比率

  • 他の機関投資家の動向にも影響を与え得る

という水準である。

特に今回のように、

  • 市場外での一括取得

  • 短期間での10%超到達

という形を取っている点は、「様子見」ではなく、最初から一定のポジションを確保する意思を示している。

大量保有報告書の事実整理

提出書類に基づく主な内容は以下の通りである。

  • 報告義務発生日:2025年12月26日

  • 提出日:2026年1月9日

  • 提出者:Ayar First Investment Company

  • 発行体:株式会社ネクソン

  • 保有株数:88,548,900株

  • 保有割合:10.71%

  • 取得方法:市場外取引(グループ企業間で無対価取得)

  • 保有目的:純投資

  • 重要提案行為等:該当事項なし

特筆すべきは、取得資金について「グループ企業間において、無対価で株式を取得した」と明記されている点だ。

これは、外部から新規に資金を投じたというより、既存グループ内での持分再配置であることを示している

アヤル・ファースト・インベストメントとは何者か

アヤル・ファースト・インベストメントは、2017年設立のサウジアラビア系投資会社で、中東地域の富裕層・ファミリーオフィス的性格を色濃く持つ投資主体とみられる。

特徴としては、

  • 短期売買を前提としない

  • 株主として長期間保有するケースが多い

  • 事業成長・ブランド価値を重視

といった点が挙げられる。

今回のネクソン株保有も、金融投資というより、長期保有を前提とした資産配置と捉えるのが自然だ。

ネクソンという投資対象の特性

ネクソンは、オンラインゲーム・IPビジネスを中核とするグローバル企業であり、

  • 安定したキャッシュフロー

  • 世界展開可能なコンテンツ資産

  • 中長期でのIP価値の積み上げ

という特徴を持つ。

これらは、資源価格や金利変動に左右されにくい「非資源型資産」を求める中東マネーの投資方針と親和性が高い。

なぜ「市場外・無対価」で10%超なのか

今回の取得方法は、市場内での買い集めでも、第三者割当でもない。

  • 市場外

  • 無対価

  • グループ内移転

という形で10%超が形成されている。

これは、

  • 株価への直接的な影響を避け

  • 市場の需給を歪めず

  • 静かに主要株主の位置を確保する

という、極めて慎重で長期志向の手法だ。

「純投資」という説明の妥当性

保有目的は「純投資」、重要提案行為も「該当事項なし」。

10%超という数字だけを見ると、将来的な関与を警戒する向きもあるだろう。

しかし、

  • 市場外取得

  • 無対価の持分移転

  • 経営関与を示す文言の欠如

を総合すれば、本件は現時点では経営に踏み込む意図を示すものではない

むしろ、「売らない株主」としての立場表明に近い。

論評

本件は、アクティビズムや支配を巡る事例とは異なる。

むしろ、日本市場において、

  • 中東系資本

  • 長期・非対話型

  • 低回転の大口保有

という、新しい株主像が定着しつつあることを示している。

アヤル・ファースト・インベストメントの 10.71% は、経営への圧力ではない。

それは、日本のコンテンツ企業が、世界の長期資本から選別されているという事実を静かに物語っている。

ネクソンがこの株主構成をどう活かすのか。

その答えは、長期成長戦略の中で試されることになる

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