
老舗旅行会社に突きつける「静かな問い」
2026年1月22日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、資産運用会社 fundnote株式会社 が、KNT-CTホールディングス株式会社 の株式を 5.25% 保有していることが明らかになった。
一見すれば、国内運用会社による一般的な株式取得に見える。
しかし、保有目的に明記された「スチュワードシップ・コードに基づく建設的対話」という文言、そして5%を超える取得水準を踏まえると、本件は単なるパッシブ投資として片付けることはできない。
これは、経営と資本効率に対する“静かな問題提起”の始まりと見るのが自然だ。
大量保有報告書の事実整理
まず、事実関係を整理する。
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報告義務発生日:2026年1月15日
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提出日:2026年1月22日
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提出者:fundnote株式会社
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発行体:KNT-CTホールディングス株式会社
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保有株数:1,434,300株
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保有割合:5.25%
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保有目的:
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株式会社Kaihouの投資助言に基づく投資信託の信託財産運用
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スチュワードシップ・コードに則った建設的対話により、
IR・資本効率・ガバナンスの高度化と企業価値向上を促す -
受益者利益を保全するため、将来的に「重要提案行為」を行う可能性あり
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取得方法:市場内での取得
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新株予約権等の保有:なし
本件は、普通株式のみの保有であり、新株予約権や転換社債といった希薄化を伴う手法は用いられていない
取得主体・fundnoteとは?
問題は「誰が買ったか」である。
fundnoteは2021年設立の比較的新しい資産運用会社だが、その運用スタンスは明確に スチュワードシップ型 に位置付けられる。
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短期的な値幅取りを目的としない
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経営との建設的対話を前提とする
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必要に応じて、保有目的を「重要提案行為」に切り替える柔軟性を持つ
特に本件では、保有目的の段階で将来の重要提案行為を明示しており、「黙って持つだけの株主」ではないことが、あらかじめ示されている。
なぜKNT-CTホールディングスなのか
次に問われるのは、「なぜこの会社なのか」だ。
KNT-CTホールディングスは、近畿日本ツーリストやクラブツーリズムを傘下に持つ、国内有数の旅行関連企業である。
一方で、その構造を見ると、
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コロナ禍後の需要回復は進んだものの、収益力は道半ば
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事業再編や構造改革の成果が市場評価に十分反映されていない
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親会社(近鉄グループ)との関係性も含め、ガバナンスの複雑さを抱える
といった課題が残る。
これらは、スチュワードシップ型投資家が「対話による改善余地」を見出しやすい典型的な構造と言える。
5.25%という取得比率の意味
5.25%という数字は、偶然ではない。
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大量保有報告書の提出義務が生じる明確なライン
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経営陣に対して正式に意見を述べられる立場
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しかし、支配や敵対関係を生まない水準
この比率は、「まず対話を始めるための最低限の発言権」として極めて合理的だ。
さらに、普通株式のみで構成されている点からも、本件が金融テクニックではなく、企業価値改善を主眼に置いた取得であることが分かる。
経営陣・市場へのメッセージ
大量保有報告書は、単なる法定開示ではない。
それは、株主から経営陣への公開書簡でもある。
本件が突きつけるメッセージは明確だ。
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資本効率は最適化されているか
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IRは十分に機能しているか
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ガバナンスは外部株主に開かれているか
fundnoteの5.25%は、経営陣に対する敵意ではなく、「説明責任を果たしてほしい」という要求に近い。
企業・資本構造の将来余地
現時点でKNT-CTホールディングスには、いくつかの将来余地が残されている。
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事業ポートフォリオの整理・焦点化
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収益構造の可視化
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親会社との関係性を含めたガバナンス整理
これらが進めば、市場評価が変化する条件は十分に整っている。
重要なのは、fundnoteが「何かを起こす前に入った」のではなく、「変化が起き得る局面で入った」という点だ。
今後想定されるシナリオ
現時点で断定はできないが、以下の展開は想定される。
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経営陣との対話継続
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IR・資本政策に関する意見表明
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状況次第では、重要提案行為への移行
少なくとも、本件は
「何も起きない大量保有」ではない。
論評
老舗企業に求められる“説明力”の時代
本件は、KNT-CTホールディングス一社の問題にとどまらない。
日本市場では、老舗企業ほど「説明しなくても分かってもらえる」という前提が残りやすい。
しかし、資本市場はすでにその段階を越えている。
fundnoteの 5.25% は、経営権を奪うための数字ではない。
それは、「説明と対話を求めるための最低限の発言権」である。
経営陣がこのシグナルをどう受け止めるのか。
その姿勢こそが、KNT-CTホールディングスの将来価値を左右することになるだろう。

