
ブリッジインターナショナル、B2B営業改革の“総合支援者”へ進化──M&A・組織再編で描く成長の第二章(2024年12月期 有価証券報告書レビュー)
はじめに
営業アウトソーシングの老舗、ブリッジインターナショナル株式会社(証券コード:7039)が、2024年12月期の有価証券報告書を公表した。
同社は2000年代初頭から「インサイドセールス」という言葉を日本に根付かせたパイオニアだが、近年はその枠を超え、SalesTech、研修、業務プロセス設計などを包括するB2B営業の総合支援企業へと転換を図っている。
本稿では、売上・利益動向に加え、セグメントごとの再定義、M&Aによるケイパビリティ拡張、キャッシュフローの健全性、そして論評社としての視点から、同社の「営業支援産業のリーダー企業」構想を読み解く。
1. 業績ハイライト(2024年12月期)
- 売上高:86.1億円(前年比+22.7%)
- 営業利益:9.5億円(同+4.0%)
- 経常利益:9.9億円(同+8.9%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:6.6億円(同+2.7%)
- 営業利益率:11.0%(前年:13.0%)
- 自己資本比率:73.0%(前年:80.4%)
過去最高の売上高を記録したものの、営業利益率は2pt低下。これは、M&A後の人件費・業務コスト増加が要因とみられる。
特別損失や減損計上はなく、健全な成長路線を継続している。
2. セグメント別業績と“再定義”の意味
インサイドセールスアウトソーシング(ISO)事業
- 売上高:45.2億円(+5.4%)
- セグメント利益:6.7億円(+4.5%)
- 主要顧客:外資IT、国内IT、製造、金融、大手通信
長年の看板事業。SalesforceやHubSpotなどのMA/SFA導入支援と連携し、BtoB営業における“標準化された分業モデル”を浸透させてきた。
近年は人的な受電対応から、チャットボット連携、カスタマーサクセス支援へと守備範囲を拡大。
「商談機会創出」から「パイプライン管理」までの中流工程を科学的に可視化するケイパビリティは、依然として競争力が高い。
プロセス・テクノロジー(PT)事業
- 売上高:18.0億円(+219.9%)
- セグメント損失:▲0.2億円(前年:▲0.23億円)
M&Aによって吸収したトータルサポート社、2BC社の売上をフル連結。SFA/CRMのカスタマイズ、AI連携、ITインフラ設計までを手がけ、業務支援領域のテクノロジー比率を高める構え。
赤字幅は縮小しており、今後は収益化フェーズに移行するかが焦点。
研修・人材育成(トレーニング)事業
- 売上高:22.9億円(+5.9%)
- セグメント利益:2.9億円(+1.2%)
- クライアント:大手製薬、SaaS企業、SIer、新卒一括導入系の大手人材企業など
新卒研修に加え、リスキリング・DXスキル育成プログラムを強化中。講師派遣型からオンライン対応型までラインナップを拡充しており、LMS(学習管理システム)連携やバッジ制評価制度導入など、プロダクト志向が強まっている。
「育成から現場定着まで」を包括できるプレイヤーは希少であり、ストック型ビジネスとしてのポテンシャルは大きい。
3. 財務の健全性とキャッシュフロー
財務指標
- 総資産:59.9億円(+15.6%)
- 純資産:43.9億円(+5.5%)
- 自己資本比率:73.0%(▲7.4pt)
- 有利子負債:2.6億円(前年比+2.2億円)
前年に比べてM&A資金調達・自己株買い・配当増によって自己資本比率はやや低下したが、総資産・純資産ともに増加。固定比率は50%台前半と健全な水準であり、借入依存度は極めて低い。
キャッシュフロー状況
- 営業CF:+9.6億円(前年:+6.8億円)
- 投資CF:▲3.4億円(M&A関連含む)
- 財務CF:▲6.2億円(配当・自己株・借入返済)
- 現金及び現金同等物:26.7億円(前年比+2.5億円)
営業キャッシュフローは営業利益に連動し増加。投資CFでは、M&Aによるのれん計上(無形資産)と子会社株式取得によりマイナスが拡大。財務CFは借入金の返済と自社株買いによって減少しているが、全体としてはポジティブな資本政策の範疇。
フリーキャッシュフローは6億円を超えており、攻めと守りの両立が図られている。
4. 経営戦略と未来の構図
- 2025年に持株会社体制へ移行(吸収分割・新設分割)
- 事業カンパニー化による意思決定スピードの高速化
- アウトソーシング/プロセス設計/研修の3ドメインが自律的に成長可能な“マトリクス経営”へ
さらに、既存顧客基盤(400社超)を起点としたクロスセル強化が狙い。たとえば、インサイドセールス導入顧客に対して、Salesforce構築や研修を後追いで提案するモデルが顕在化してきた。
論評社としての視点
ブリッジインターナショナルは「営業アウトソーサー」から「営業DXプロバイダー」へと進化を遂げている。
分業から統合へ、労働集約からプロダクト志向へという転換の只中にある。
2025年は、事業持株会社化による経営の柔軟性と統制力を両立できるかが鍵。
M&Aによる成長ブーストが一巡する中で、いかにして有機的な事業連携と利益成長を両立するか、その戦略実行力が問われる局面に入った。
「営業を科学する」「人を支援する」を掲げるこの企業が、次の10年で“現場を変えるインフラ”になれるのか──その変革は、既に始まっている。