【決算分析】オキサイド

赤字拡大とともに見えた「のれん」の減損

企業概要

“光の素材”で勝負するニッチトップ企業、だが財務は光らず

  • 社名:株式会社オキサイド(OXIDE Corporation)

  • 所在地:山梨県北杜市

  • 設立:2000年

  • 上場市場:東証グロース(旧マザーズ)

  • セグメント:単一セグメント(光学関連製品)
    └ 製品別に「新領域」「半導体」「ヘルスケア」の3事業を区分

  • 連結子会社:Raicol Crystals Ltd.(イスラエル)/オキサイドパワークリスタル

主要財務ハイライト

(2025年2月期連結)

指標 数値(前年同期比)
売上高 83.9億円(+27.1%)
営業利益 1.2億円(黒字転換)
経常利益 2.3億円(黒字転換)
親会社株主に帰属する純損失 ▲27.0億円(赤字幅拡大)
営業CF +8.9億円(前年は▲9.5億円)
自己資本比率 29.7%(▲9.8pt)
EBITDAマージン 13.6%(前期比 +14.8pt)
のれん減損額 30.9億円

Raicol社の買収が早くも「のれん」減損に

イスラエルの結晶メーカーRaicol Crystalsを2023年に買収したが、買収からわずか2年以内でのれん30億円超を減損処理。中東紛争による需要減退の影響もあるが、買収判断の妥当性に疑問が残る。

特別損失の大半を構成したのはこのRaicol社関連であり、「減損前提」の買収だったのか、あるいはリスク分析が不十分だったのか。いずれにせよ、株主価値の毀損は明白。

稼ぎ頭は半導体セグメント、しかし集中リスクも

売上高のうち56.0%(47.0億円)を半導体向けが占め、前年同期比+49.8%と急成長。これは既存品の出荷増と新製品の開発受託が奏功したためとされる。

一方で、販売先の約65%が上位6社に集中し、そのうち中国・米国の比率が極めて高い。地政学リスクや為替変動に強く影響を受ける体質となっている。

財務構造の悪化と高まる借入依存

総資産:約182億円に対し、有利子負債が約104億円(総資産比57%)まで拡大。
特に短期借入の増加が顕著で、キャッシュ増の裏で財務安定性が揺らいでいる。

財務コベナンツに一部抵触しており、今後の資金繰りが脅威となる可能性も明記されている。金融機関との関係性次第では、追加の引当や財務再構築が必要になるかもしれない。

売上は伸びるが、ヘルスケア事業が足かせ

PET診断装置向けのシンチレータ単結晶を扱うヘルスケア事業は、売上12.2億円(前年比▲23.0%)と唯一の減収セグメント。新規顧客の立ち上げ遅延も響いた。

医療用途の装置は需要安定性が高いはずだが、Raicol社同様に想定外の需給ギャップが顕在化している

技術は輝くが、経営の“光”は陰る

オキサイドは経済産業省の「グローバルニッチトップ100選」に選ばれた企業であり、単結晶技術という“キーマテリアル”を武器に成長を遂げてきた。

しかし、買収失敗・借入依存・セグメント間のギャップという“三重苦”が、足元の経営を重くしている。特にRaicol社の減損処理は、経営判断の脆弱性を市場に印象づける結果となった。

今後は、投資家への説明責任とともに、財務体質の改善・事業ポートフォリオの再設計が不可欠だ。光の技術を掲げる以上、経営もまた“透明”であるべきである。

おすすめの記事