
テイツーの実力と限界が露呈した決算
企業概要
株式会社テイツーは、岡山を拠点とするリユース専門企業であり、書籍・トレカ・ゲーム・ホビーのリユース販売に加え、ECとBtoB領域にも進出している。
直営・FC合わせて170店舗超を展開し、TAYSなど独自のITツールを活用したオリジナル戦略を持つ。
業績サマリー(第35期)
指標 | 金額 | 前期比・備考 |
---|---|---|
売上高 | 364.8億円 | +3.6% 増収 |
営業利益 | 9.1億円 | ▲31.6% 減益 |
経常利益 | 9.2億円 | ▲35.4% 減益 |
当期純利益 | 5.0億円 | ▲11.8% 減益 |
営業CF | +14.6億円 | 前年比大幅改善 |
投資CF | ▲14.4億円 | 関係会社株取得等 |
自己資本比率 | 45.9% | 前年比▲0.9pt |
減益決算の実態
“拡大”と“利益の失速”の分岐点
-
売上は増収継続(4期連続)ながらも、営業・経常・最終利益すべてが減益。
-
利益減少の主因は以下:
-
トレカ事業の粗利低下
-
人件費・物流費などの販管費上昇
-
積極的な出店・設備投資によるコスト増
-
-
特別損失として減損損失1.54億円を計上、収益性の薄い資産が表面化した。
セグメント別・商品別の売上構造
“トレカバブル”の剥落
商材分類 | 売上(億円) | 前年比 | コメント |
---|---|---|---|
トレカ(新品+中古) | 148.8 | △0.3% | 伸び悩み/粗利率は低下傾向 |
ゲーム(同上) | 128.3 | △0.6% | 中古増、新品減で相殺 |
ホビー(同上) | 30.9 | +31.4% | 商材多様化の主役に急浮上 |
その他/レンタル | 2.6 | ▲大幅減 | 収益貢献度は低下傾向 |
-
売上構成比で中古52.3%/新品46.5%という、業界平均に対し新品比率の高さが特徴的。
-
特にホビー商材の拡大が構造変化の兆しとなっている。
キャッシュフロー構造
営業CFは回復、だが資金余力は減退
区分 | 金額(百万円) | コメント |
---|---|---|
営業CF | +1,462 | 税前利益+仕入債務増が寄与 |
投資CF | ▲1,436 | 関連会社株取得・出店・DX投資等 |
財務CF | +15 | 借入と返済の均衡/やや強引なバランス |
現金残高 | 2,815 | 前期比+42百万円(実質横ばい) |
-
投資は継続されているものの、営業キャッシュが一時的に跳ねただけの可能性もあり。
-
中長期での成長投資余力には注意が必要。
成長戦略のリアル
“出店拡大”と“人材不足”のジレンマ
-
テイツーは「360度リユース」として5領域戦略を標榜:
-
① 店舗拡大:イオンモール中心に小型出店を加速
-
② EC強化:「ふるいちオンライン」が通期黒字化
-
③ BtoB:「TAYS」「トレカ自販機」等の外販・特許取得
-
④ グローバル:提携先と海外販路開拓(TORICOなど)
-
⑤ IP活用:イベント連携・限定商品の販売
-
-
だが、「出店=人材負担」の構造に限界が見え始めており、平均年収481万円・平均勤続11.5年の人材戦略が今後の鍵に。
「リユースの覇者」か、「トレカ依存の終焉」か
テイツーの成長戦略は明快だ。だが、その実行力と収益力には明確な“壁”が現れた。
-
売上増加=利益拡大、という健全成長の法則が崩れた今期。
-
とくに、トレカに依存したモデルの限界と、人材・出店の持続性に疑問符が付く。
論評社は問う。
この会社は、「再成長」できるリユースの核を見出せるのか──
それとも、「バブルの残り香」にすがるだけなのか。
次期、真価が問われる。