【決算分析】テクミラホールディングス株式会社(第21期)

自社プロダクトとM&Aの狭間で揺れる「三位一体モデル」

企業概要

テクミラホールディングスは、「ライフデザイン」「AI&クラウド」「IoT&デバイス」の3事業を主軸とするコンテンツ×IT×モノづくりの統合型DXグループ


キャラクター・教育・健康といった生活分野におけるBtoC・BtoBアプリ(例:RenoBody、KarteConnect)、AIチャットボット「OfficeBot」、アドレス帳SaaS、さらには「aiwa」ブランドでのタブレットPCやIoTデバイスまで、自社開発・自社ブランド・受託開発を横断した“混成ポートフォリオ”を構築している。

2008年マザーズ上場(旧ネオス)、2023年にテクミラHDへ商号変更。直近では、ヘルスケアベンチャーWellmira、HRTechのRetoolなどを子会社化し、「自社プロダクト主体」への転換と「M&Aによる事業構築」戦略を加速している。

 業績サマリー

(2024年3月~2025年2月)

指標 実績 前期比/備考
売上高 111.7億円 +27.8%(過去最高)
営業利益 +9,138万円 黒字転換(前期▲1.2億円)
経常利益 1.03億円 ▲22.6% 減益(有価証券売却益減)
親会社純利益 ▲1.41億円 赤字転落(減損・評価損)
営業CF +13.7億円 前期比+12億円超の大幅改善
投資CF ▲11.8億円 M&A・設備投資増加による支出増
現預金残高 29.6億円 安定水準維持(有利子負債:27.5億円)

➡ 本業は黒字転換を果たすも、のれん償却と評価損による最終赤字が残った“ねじれ構造”

セグメント別

三事業すべて増収、だが利益構造には差

セグメント 売上高 セグメント利益 前年比 コメント
ライフデザイン 31.3億円 +7,731万円 +46.8% ゲームと健康DXの回復/医療系は不調
AI&クラウド 25.7億円 +1.87億円 +27.8% チャットボット好調/新規SaaS投入
IoT&デバイス 55.0億円 +2.27億円 +1104.7% aiwa製品+ODM生産が急回復
  • 特にIoT事業のセグメント利益10倍超が全体の業績牽引役に。

  • M&Aで加えたウェルネス事業やHRTech事業は、収益貢献が一部に留まり、のれん償却費として重しにもなっている

キャッシュフローと財務

営業は潤沢、投資は膨張

  • 営業CF:+13.7億円(税前損失も償却費が多くキャッシュ創出)

  • 投資CF:▲11.8億円(のれん・子会社株式取得・ソフト開発費)

  • 財務CF:+7,970万円(借入で調整)

➡ 自己資本比率は57.3%まで低下し、のれん・借入依存の資本構造が進行中。
➡ グループM&A戦略の“副作用”が財務構造にも及び始めている。

構造上のリスクと戦略的転換

  • “受託→自社サービス”シフトを掲げるも、プロダクト化の遅れや採算悪化が顕在化

  • 開発遅延・部材高騰・海外製造リスクへの対応が重要

  • グローバル展開(ベトナム、深圳、インド)を進める一方、多国間分散体制による管理負荷も増大

「三本柱」か、「三重苦」か

テクミラHDの決算は、外形的には「事業が拡大し、キャッシュも増えた」という内容だ。

だが中身を見れば──

  • AI・クラウドは黒字だが競争激化で失速の兆し

  • ライフデザインはヒット作頼みで安定せず

  • IoT&デバイスは今期こそ復調したが為替・部材リスクの多い構造

加えて、のれん償却や投資回収のタイムラグが財務を圧迫し始めている


この企業は、本当に「三事業を持つ強さ」なのか──
それとも「どれも主軸になりきれない三重苦」なのか。

次期は、“三本の柱が支える屋台”になるのか、“三方向に引っ張られる負荷”になるのか、その分水嶺である。

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