【決算分析】協和コンサルタンツ

― 建設×ITの二軸展開、利益率とキャッシュ創出力で示す非上場的強さ ―

企業概要

防災・減災ニーズを背負う“社会インフラ屋”の静かな実力

協和コンサルタンツは、東京都渋谷区に本社を置く建設コンサルタント企業であり、主に官公庁・地方自治体向けに道路、橋梁、河川、上下水道などの社会インフラに関する調査・設計・点検業務を提供している。

とりわけ、国交省・防衛省などをクライアントに持つことから、公共投資や防災・減災政策の動向に業績が強く連動する構造を持っている。

また、情報処理業(官公庁向けIT)と不動産管理も有し、事業の裾野を広げるものの、本質は「公共セクター依存型の建設コンサル」に他ならない。

連結業績

受注減でも“売上+10%、利益+15%”の安定成長

指標 前年同期(2024年5月) 今期(2025年5月) 増減率
売上高 4,355百万円 4,799百万円 +10.2%
営業利益 566百万円 655百万円 +15.7%
経常利益 563百万円 651百万円 +15.7%
純利益(親会社) 384百万円 438百万円 +14.0%
営業CF 1,328百万円 1,846百万円 +38.9%

業績は極めて堅調である。注目すべきは、受注高(4,966百万円)は前年同期比8.0%減であったにもかかわらず、売上・利益ともに二桁成長を達成している点にある。

これは、建設コンサルタント事業における大型案件の進捗と利益率改善、ならびに販管費削減による構造的な改善が背景にある。


 セグメント別の構造

本業が稼ぎ、他は補完機能

セグメント 売上高 営業利益(または損失) 備考
建設コンサルタント 4,047百万円 719百万円 主力。12.7%増収・16.9%増益
情報処理 749百万円 ▲8百万円 赤字転落(前年は黒字)
不動産賃貸・管理 2百万円 20百万円 黒字確保。内部向け性格が強い

建設コンサル部門の利益が全体を牽引しており、情報処理は赤字化、賃貸は小規模だが安定黒字という構図。

要するに、「一社で一本柱」ではあるが、その一本が極めて強靭というのが協和コンサルタンツの姿だ。

キャッシュフロー・財務構造

現預金+14億円、自己資本比率51.9%

  • 営業CF:1,846百万円(前年比+518百万円)

  • 投資CF:▲15百万円(前年:▲5百万円)

  • 財務CF:▲435百万円(前年:▲941百万円)

  • 現預金残高:46.7億円 → 前年比+13.9億円

とくに営業CFは、売上債権の減少(▲6.8億円)、契約負債の増加(+3.9億円)など、「未収抑制と前受収入」で実質キャッシュが膨らんだ構造であり、企業経営の安定性を支えている。

加えて、短期借入金の返済を進めたにもかかわらず現預金を増やしている点は、“借入金に頼らないキャッシュ主義経営”の証左である。

株主構造と資本政策

フリージア系上場グループの一角

株主名 保有比率
フリージア・マクロス株式会社 45.18%
三菱UFJ銀行 2.39%
SBI証券 1.90%
協和コンサルタンツ社員持株会 1.45%

最大株主であるフリージア・マクロス(旧:フリージア・オフィスサービス)は、JASDAQ系の中堅企業グループ。

上場維持による信用確保と資金調達よりも、“グループ連携と受注安定”を重視した保守的構造が特徴である。

ストックオプションも発行されておらず、自己株式は0.2%程度と希薄化懸念も極小。資本金は1億円で、東証スタンダード上場企業としては極めてコンパクトな資本構成を持つ。

この企業は「地味に強い」。そして、変わらないことで評価される。

協和コンサルタンツの決算は、一言でいえば「手堅く、変化が少ない」

だがその裏側では、公共事業予算の波を的確に捉え、進捗と利益率を整え、キャッシュを積み上げ、借入を減らしているという、“理想的な財務操縦”が実行されている。

情報処理事業の赤字化や、人材獲得競争といった構造的課題はあるが、それでも営業利益率13.6%、営業CF+18億円、自己資本比率52%という指標は、「社会インフラに近い企業にしか到達し得ない数字」だ。

今後も、防衛関連・インフラ再整備・点検義務化などの追い風が続く限り、この企業の強さは続くだろう。

上場企業の中でも、「堅実性」「持続性」「キャッシュ主義経営」を重視する投資家にとって、協和コンサルタンツは注目すべき“本質的な価値株”である。

おすすめの記事