SENIOR INTERNATIONAL、フェローテック株を5.04%取得

“シンガポール経由の新勢力”が半導体製造周辺領域に静かに接近

2025年7月25日、SENIOR INTERNATIONAL HOLDING (SINGAPORE) PTE. LTD.(以下、シニア・インターナショナル)は、フェローテックホールディングス株式会社(証券コード:6890)の株式2,375,100株(発行済株式47,117,949株のうち5.04%)を保有していることを関東財務局に提出した大量保有報告書にて明らかにした。

表向きは「純投資」と記載されているが、設立間もない同社が7.2億円(自己資金)を投じて1ヶ月未満で5%ラインを突破した背景には、アジア経由の資本進出モデルと、半導体関連市場への本格的関与を狙う布石の可能性がにじむ。

SENIOR INTERNATIONALとは

“研究開発法人”を名乗るニューカマーの正体

提出者は、2022年6月2日にシンガポールで設立されたばかりの新興企業であり、法人登記上の業種は「電子分野における研究開発(医療科学を除く)」とされている。

  • 本社所在地:460 Alexandra Road MTower, #11-06, Singapore

  • 代表者:CHEN XIUFENG(チェン・シュウフェン)氏

  • 連絡窓口:松村総合法務事務所(大阪)

設立2年目で日本市場において7.2億円超の投資を行っている点からも、単なるファイナンシャル・インベスターではなく、戦略的投資や提携・技術連携を視野に入れた“産業側プレイヤー”としての性格を持つ可能性がある


フェローテックとは

精密加工と真空装置部品の中核、半導体装置のインフラを支える

フェローテックは、真空シールや半導体装置向けの石英部品・セラミック製品などを中核事業とし、以下のような特徴を持つ。

  • 売上高:約2,000億円(2025年3月期)

  • 主力:半導体製造装置部品、電子材料、精密加工部品

  • 営業利益率:10%前後、好調を維持

  • 海外売上比率:約70%、特に中国との結びつきが強い

  • 株主構成:外国人投資家比率が高く、アクティビストやPEによる保有事例も散見

つまり、資本政策が緩く、かつ高収益・高成長を維持する“開かれた半導体インフラ企業”として、アジア系戦略投資家にとって絶好の対象である。

取得の構造

自己資金7.2億円を投下、約1ヶ月で段階取得

報告書によれば、SENIOR INTERNATIONALは2025年6月24日から7月15日のわずか約3週間の間に、以下のような連続取得を実行している:

取得日 株式数 取得手法
6月24日~7月15日 計2,375,100株 全件市場内、合計14件

取得資金は全額自己資金であり、借入・ファンド経由ではないことから、“買った後に即売り抜ける”ような短期投資ではなく、保有前提の戦略的関与型資本であることが分かる。

また、1日最大10万株・最小4,000株まで変化をつけながら分散的に買い進めており、市場価格への影響を避けた巧妙な累積スタイルである。

“産業型アジア資本”が動いたときの示唆とは何か

SENIOR INTERNATIONALは、報告書上「純投資」「重要提案行為なし」としているが、次のような要素が含意される。

  • 同社が掲げる「電子分野の研究開発」とフェローテックの事業が親和性を持つ

  • 海外企業との共同研究、製造拠点シェア、OEM提携の余地が高い

  • 自社技術の日本市場展開にあたり、フェローテックの販路・顧客基盤を活用する構想もあり得る

特に、中国・東南アジア系の資本が「製造業のインフラを抑える形で戦略的資本参加を行うモデル」は、過去にもシャープやジャパンディスプレイの例で繰り返されてきた。

SENIORの登場は、“外資的アクティビスト”ではなく“産業型資本主義”の匂い

今回の保有報告は、単なる5%ラインの突破ではない。それは、「電子産業の川中領域」に対するシンガポール拠点のプレイヤーが仕掛ける静かな資本包囲網の入口である。

日本企業にとっては、アクティビストファンドとは異なる次元で、「誰が資本を持ち、誰が連携し得るのか」が再び問われている──そのような資本の地政学が、フェローテック周辺で起動しつつある。

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