
ボストン発・カナメ・キャピタルの日本戦略
2025年8月7日、関東財務局に提出された一通の変更報告書が、静かな注目を集めた。
提出者はKaname Capital, L.P.(カナメ・キャピタル・エルピー)──米マサチューセッツ州ボストンに拠点を置く、機関投資家である。
報告対象は、株式会社インターアクション(7725)。
半導体製造向け検査・光学装置メーカーとして成長してきたジャスダック上場企業だ。その企業の発行済株式の10.42%を保有しているという事実が、この報告書によって明らかとなった。
保有目的は“純投資”
カナメ・キャピタルの報告書には、取得目的として「純投資」と記されている。
一見すると、短期的なキャピタルゲインや配当利回りを狙ったパッシブ投資のように見える。
しかし注目すべきは、以下の点である。
- 直前の報告時点(9.20%)から1.22ポイントの上昇
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保有株数:1,199,700株(うち375,400株は借入株式)
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信用保証金代用として684,500株を提供済み
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顧客との投資一任契約に基づく運用
これらの構造は、単なる“株式保有”ではなく、綿密な資本構成の設計を伴う投資手法であることを物語る。
借株による資金調達、信用保証金としての株式活用は、アクティブファンドの典型的な手法であり、企業への影響力行使を見据えた“設計型保有”とも解釈できる。
なぜインターアクションなのか?
カナメ・キャピタルが注目したインターアクションは、検査用LED光源装置や画像処理装置を製造する独立系技術メーカーである。
近年は中国市場の減速や設備投資の先送りなどが響き、一時株価が伸び悩んでいた。
しかし、次のような構造的魅力が存在する:
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PBR:1倍未満(直近で0.85倍前後)
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自己資本比率は70%超で健全
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現金・預金も潤沢
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配当利回りも安定
つまり、財務体質は極めて良好でありながら、市場評価が相対的に低いという典型的な「眠れる資本株」なのである。
カナメ・キャピタルにとってこれは、“市場の錯覚”を突く機会だったのだろう。
アクティビストとしての表明はしていないが、企業側に資本効率改善を促す可能性を見据えた保有とみるのが自然である。
10.42%という保有比率
カナメ・キャピタルの保有比率は、10.42%。これは極めて戦略的な数字である。
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議決権ベースで単独筆頭株主クラスに達する水準
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株主提案権(議案提出)を十分に行使可能
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経営陣に対する“発言なき圧力”として機能するレベル
そして現時点で「物言わぬ投資家」を貫いていることが、むしろ企業にとって“沈黙の重圧”としてのしかかる。
動かなくても効く。語らずとも睨む。そのような存在として、カナメ・キャピタルは企業の意思決定プロセスに“影”を落とし続けることになるだろう。
新時代の外資ファンド
この投資は、外資ファンドによる短期売買とは異なる。カナメ・キャピタルが見据えているのは、「構造的な改善を通じた株主価値の引き上げ」だ。
それを実現するか否かは、インターアクション自身の判断に委ねられている。だが明らかなのは、すでに資本の側から変革のサイレントシグナルは発信されているということだ。
「10%超の外資ファンドがいる」という事実は、数字以上に企業ガバナンスの空気を変える。インターアクションがこの静かな監視の中で、どう進化を選ぶのか──その答えは、やがて株価に映し出されるだろう。