Evo Fundが狙う“日本IT小型株の盲点”

Def Consultingに突きつけられた5.21%の沈黙

Def Consultingとは

“無名だが黒字”、小型ITベンチャーの伏兵

Def Consulting(4833)は、東証スタンダード市場に上場するシステム開発系ベンチャー企業である。

上場来の知名度は決して高くないが、一定の黒字経営を維持し、特に以下のような特徴を持つ。

  • 主力事業:クラウドERPや業務系システムの受託開発

  • 市場評価:PBRは0.5倍前後、PERも2ケタ未満と極端な割安状態

  • 財務体質:利益剰余金を堅調に積み上げており、債務比率は低い

  • 資本政策:創業経営陣による保有が過半未満、“空白”の株主構成

このような「放置された黒字企業」に対して、Evo Fundの保有は強い示唆を持つ。

提出者の正体

Evo Fundとは何者か?

提出者は、ケイマン籍のEvo Fund(エボ・ファンド)と、米国法人のEvolution Capital Management LLCの2社 。

▍Evo Fundの概要

  • 設立:2006年12月22日(ケイマン諸島)

  • 代表:リチャード・チゾム

  • 管理者:アンダーソン・毛利・友常法律事務所(大手町)

  • 主な戦略:小型株・低PBR銘柄を対象に、借株スキームによる収益モデルを展開

  • 保有目的:純投資。ただし「経営助言を行う可能性あり」と明記

彼らは表向きは「非アクティビスト型」を装うが、実際には複数の銘柄で株価変動タイミングと一致した保有行動を繰り返しており、「静かな圧力」の典型とも言える存在だ。

取得の中身

1,860,000株で5.21%、すべて借株

今回、Evo FundはDef Consulting株を1,860,000株(5.21%)保有していると報告。

しかし、その内訳は極めて特徴的だ。

▍【取得構造の内訳】

株数 取引日 取得方法 相手方
300,000株 8月25日 市場外取得 BNPパリバ(借株)
150,000株 8月26日 市場外処分 市場外売却
1,710,000株 8月26日 市場外取得 The Capital(借株)

つまり、最終保有分はすべて借株=ゼロコスト保有であり、売買よりも“評価差益・空売りカバレッジ・イベント待機”の色合いが濃いのが特徴である。

加えて、調達先がBNPパリバ、ステート・ストリート、The Capitalといったグローバルプライムブローカーであり、ヘッジファンド特有の構造的取引が用いられている。

なぜDef Consultingなのか

狙われる資本構造の“隙”

Evo Fundがあえてこの銘柄を選んだ理由は、以下の“放置構造”にある。

▍① 割安性の極み

  • PBR 0.5倍未満(2025年8月時点)

  • 自己資本比率は70%以上、無借金経営

  • 成長は鈍化傾向だが、黒字・配当は維持

▍② 経営支配の“空白”

  • 創業者持株はあるが、筆頭株主でも15〜20%水準

  • 株主構成は分散的で、外部勢力が影響力を持ちやすい

  • IR活動やガバナンス体制は弱く、ファンドからの“助言”が通りやすい構造

▍③ ボラティリティの低さと仕掛け余地

  • 平常時の出来高は非常に低く、まとまった買い・売りが価格を歪めやすい

  • 借株→空売り→イベント提案のパターンで値動き誘導が可能

今後のシナリオ

静かな5.21%の行方

Evo Fundの報告書には「重要提案行為:該当なし」とあるが、「状況に応じて経営陣に助言」と明記されており、以下のような展開が想定される。

シナリオ 概要
株価低迷を背景に株主提案 配当性向の引き上げ、自己株買い提案など
他ファンドとの連携による“数%連合” 外資系株主同士が議決権連合を形成
経営陣交代・外部招聘の要求 IR活動強化やガバナンス改革提案

いずれの展開においても、“5%強の外資”が静かに座っているという事実が、企業側にとっては“見えないプレッシャー”となる。

これは“ポジション取り”ではなく、“仕掛けの布石”だ

今回のEvo FundのDef Consulting株保有は、単なる低PBR狙いではなく、制度と市場の“盲点”を突いた仕掛け型投資の一環と見るべきだろう。

  • 資金投入ゼロ(借株)

  • 株価は停滞、ガバナンスも緩い

  • 売却・提案のいずれにも転じうる“万能カード”

Def Consultingは、Evo Fundの“沈黙の圧力”にどう向き合うのか。
それがこの数%の報告書に潜む最大の問いだ。

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