
大量保有報告書の提出者と発行者情報
2025年7月4日、株式会社OMTホールディングス(代表取締役:大島豊子)は、株式会社フォーサイド(証券コード2330/東証スタンダード)に対する大量保有報告書を関東財務局に提出した。
本報告書はOMTホールディングス、R-1合同会社、大島正人氏の3名連名による提出であり、総保有割合は19.09%に達している。
発行者であるフォーサイドは、エンタメコンテンツやNFT関連、フィンテックなどを扱う新興系上場企業で、過去にも短期資本の流入や企業統治への外部干渉などが複数回報じられてきた。
今回の報告は、そうした背景を踏まえても極めて注目度が高い資本構造の変動と言える。
提出者の構造と背景
報告書を精査すると、以下のような特徴的な構図が浮かび上がる。
まず、OMTホールディングスは設立からわずか2ヶ月という新設法人でありながら、フォーサイド株を一括で5,130,000株(11.74%)取得。取得単価は112円で、全額が自己資金(約5.7億円)と記されている。
一方、同時期に登場するR-1合同会社は3,208,600株(7.34%)を保有し、その取得資金も全額自己資金(約3.9億円)とされている。
R-1は投資事業組合の無限責任組合員であり、実質的なオーナーはOMTと同一人物とみられる。
さらに注目すべきは、大島正人氏という個人の存在である。直前の報告では彼が13.61%を保有していたが、今回の報告では0株保有に転じている。
これは、6月27日付で自身の保有株をOMTに対して市場外で一括譲渡したためであり、「個人名義→新設法人→投資ファンド」への株式移転スキームが明確に確認できる。
実質的な支配構造と利害関係
つまり、名義上は3者による共同保有に見えるが、実質的には大島一族(または特定の利害関係グループ)によるフォーサイド株の再編持株化であり、法人化と分散保有を装った支配構造の刷新である。
報告書では保有目的を「安定株主としての長期保有」としているが、設立1ヶ月の法人が5億円以上の株式を現金一括取得すること自体、通常の事業判断としては不自然である。
また、R-1合同会社の株式保有目的もほぼ同一である点から、実態としては大島正人氏の影響力を保ったままの支配権維持と見るのが妥当だ。
加えて、大島正人氏はフォーサイドの「会社役員」として報告書に明記されており、フォーサイド社内に籍を置いたまま支配株式を法人に振り分けている。
これは明確な利益相反構造の一端とも捉えうる。
今後の焦点
今回の資本移動は、単なる資産運用ではなく、上場企業の支配構造を再構築しようとする戦略的取引の一環である可能性が高い。
特に以下の観点で引き続き注視が必要である。
- 今後の議決権行使動向と経営関与の有無
- 臨時株主総会などを通じた役員人事や資本政策への影響
- OMTやR-1を通じた株式の追加取得または処分の兆候
- 自己支配構造やガバナンス形骸化のリスク
形式上の名義変更に留まらず、実質支配権の維持と法的責任の回避を同時に狙った巧妙な株式移転スキームが背後にある可能性が否定できない。
フォーサイドにおいて今後、株式の大量取得に伴うガバナンス変化が起きるのか、それとも見せかけの資本再編で終わるのか――本件は引き続き、注意深く監視すべき資本構造事案である。