
VCによる“上場後も続く関与”はどこまで許容されるのか
2025年12月24日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、ベンチャーキャピタル大手の 株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ が、東証グロース上場の 株式会社ミラティブ の株式を、共同保有分を含めて15.84% 保有していることが明らかになった。
取得目的は「純投資」、重要提案行為は「該当事項なし」。
しかし、保有比率、共同保有の構造、そしてVCという取得主体の性格を踏まえると、本件は単なる投資開示として片付けられるものではない。
上場後もなお続く“創業支援型VCの関与”という、日本市場特有の構造が浮かび上がる。
15.84%という保有比率の重み
今回明らかになった保有割合は、提出者単体で 11.35%、共同保有者であるケイマン籍のファンド分 4.49% を加え、合計 15.84% に達する。
この水準は、
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支配株主ではない
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しかし、経営判断に無視できない影響力を持つ
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株主総会においても強い存在感を示す
という、いわば「準・主要株主」のポジションだ。
VCとしては極めて高い保有比率であり、上場後も手放さず関与を続ける意思が明確に示されている。
大量保有報告書の事実整理
大量保有報告書の主な記載内容は以下の通りである。
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報告義務発生日:2025年12月18日
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提出日:2025年12月24日
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提出者:株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
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共同保有者:グロービス・ファンド・ファイブ(GP)カンパニー・リミテッド
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合計保有株数:2,682,150株
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合計保有割合:15.84%
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保有目的:純投資
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重要提案行為等:該当事項なし
なお、これらの株式は主として上場前からの保有分および株式分割に伴う取得であり、直近で積極的に市場から買い進めたものではない点も特徴である。
グロービス・キャピタル・パートナーズとは?
グロービス・キャピタル・パートナーズは、日本を代表する独立系ベンチャーキャピタルであり、創業初期から上場後までを視野に入れた「伴走型投資」を特徴としてきた。
同社の投資スタンスを整理すると、
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短期的な株価上昇を狙う投資ではない
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経営チームとの長期的な関係構築を重視
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上場後も一定の持分を維持し、成長を支援するケースが多い
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敵対的なアクティビズムとは一線を画す
という性格が明確だ。
今回の大量保有も、VCとしての一貫した戦略の延長線上に位置付けることができる。
ミラティブとは?そしてなぜ保有が続くのか
ミラティブは、ライブ配信・コミュニティ領域を軸とするエンターテインメント企業で、個人配信者と視聴者を結びつけるプラットフォームを中核事業として成長してきた。
同社は、
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ユーザー基盤の拡大
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継続的なプロダクト開発
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将来の収益化モデルの高度化
といった中長期テーマを抱える企業であり、短期業績よりも成長ストーリーが重視されやすい構造にある。
これは、
「短期でのエグジットを急がず、企業価値の最大化を時間軸で捉える」グロービスの投資哲学と整合的だ。
すなわち、ミラティブは
VCが上場後も株式を保持し続ける合理性を持つ企業だと言える。
ロックアップと“売らない選択”
大量保有報告書には、主幹事証券会社との間で、上場日から180日間のロックアップが設定されていることも明記されている。
これは制度上一般的な措置ではあるが、
15%超という高い保有比率を踏まえると、短期的な売却よりも、保有継続を前提としたスタンスが読み取れる。
「純投資」という説明は十分か
形式上の保有目的は「純投資」であり、重要提案行為も「該当事項なし」とされている。
しかし、
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15.84%という高水準の保有
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VCという取得主体の性格
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創業期からの関与
これらを総合すると、本件は「何もしない株主」ではなく、「影響力を持ち続ける株主」としての位置付けに近い。
それは必ずしも否定されるべきものではないが、上場企業としてのガバナンスとの距離感は、常に意識される必要がある。
論評
VCと上場企業の関係は次の段階へ
本件は、グロース市場における「VCは上場と同時に退出すべき存在なのか」という問いを改めて突きつけている。
創業支援の延長として上場後も関与を続けることは、企業にとってプラスに働く場合もある。
一方で、持分が高止まりすることで、経営の独立性や市場との緊張関係が弱まるリスクも否定できない。
VCと上場企業の関係は、「育成」から「監督」、そして「自立」へどこで線を引くべきなのか。
ミラティブの今後の経営と、グロービスの関与の在り方は、日本のグロース市場にとって一つの試金石となるだろう。

