
売上259億円・純利益3億円
決算サマリー
コロプラの第17期(2024年10月期〜2025年9月期)決算は、売上規模を維持しながらも、利益水準が急激に低下した決算となった。
売上高は259億33百万円(前期比▲0.2%)と前期並みを確保した一方、経常利益は18億05百万円(前期94億7百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は3億06百万円(前期18億66百万円)と大幅な減益となっている。
売上の下支えは既存タイトルの長期運営によるものだが、新規ヒット創出に至らない構造が、利益の急減という形で顕在化した。
本決算は、コロプラが「財務的に安定した企業」である一方、「成長ドライバーを失った企業」でもあることを同時に示している。
企業概要と事業モデル
コロプラは、スマートフォン向けゲームを主軸とするエンタテインメント企業であり、「白猫プロジェクト」「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」などの長期運営型IPを中心に事業を展開してきた。
売上の大半はゲーム事業から生み出されており、実質的に単一事業モデルである点が特徴だ。
一方で、投資育成、XR、メタバース関連などへの取り組みも続けているが、これらは現時点では売上・利益への寄与は限定的であり、主軸事業を補完する段階にとどまっている。
このため同社の事業構造は、「既存IPで安定収益を確保する一方、成長余地が限定されやすい」という成熟企業特有の形に収れんしつつある。
財務分析
期末時点の総資産は約864億円と、前期からわずかに減少した。
資産構成を見ると、以下の特徴が際立つ。
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現金及び預金:約502億円
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営業投資有価証券・投資有価証券合計:約125億円
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有形・無形固定資産:約150億円前後で横ばい
現金水準は依然として高く、短期的な資金繰りや倒産リスクは極めて低い。
一方で、投資有価証券残高は前期から減少しており、リスク資産を抑制する守りの姿勢が鮮明だ。
自己資本比率も高水準を維持しているが、裏を返せば、積極的な成長投資に踏み切れていないことの証左でもある。
利益の内訳
利益縮小の構造は、数字を並べるとより明確になる。
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売上高:259億33百万円
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経常利益:18億05百万円(前期比▲約76億円)
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当期純利益:3億06百万円(前期比▲約15億円)
売上がほぼ横ばいであるにもかかわらず利益が急減した背景には、固定費構造の重さがある。
人件費、開発費、運営コストは一定水準を維持しており、売上が伸びない局面では、利益が一気に圧迫されやすい体質となっている。
また、前期に寄与していた投資有価証券関連の評価益・売却益が縮小したことも、利益水準を押し下げた。
つまり今回の減益は、「一時的要因」よりも「事業モデルそのものの限界」に近い性格を持つ。
事業セグメントの収益構造
コロプラは、実質的にゲーム事業単一セグメントである。
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既存長期運営IP:売上の大半を占有
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新規タイトル:決定的なヒット不在
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XR・新規事業:売上寄与は軽微
この構造により、売上は大きく崩れないが、成長もしないという状態に陥っている。
新規ヒットが生まれない限り、売上は横ばい、利益は費用次第で大きく振れる。
今回の決算は、その弱点が最も分かりやすく表れた一年といえる。
キャッシュフローの流れ
キャッシュフローは、コロプラの経営姿勢を如実に示している。
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営業CF:安定してプラス
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投資CF:限定的(大型投資なし)
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財務CF:配当支払が中心
営業活動によって現金を生み出す力は維持しているが、その水準は成長投資を加速させるほど強くはない。
一方で、500億円超の現金を保有しながらも、攻めの投資に踏み切っていない点は象徴的だ。
これは、リスクを抑えた経営判断とも取れるが、同時に成長機会を逃している可能性も否定できない。
株主目線での検証ポイント
株主の立場から見ると、検証すべき論点は明確である。
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新規ヒット創出に向けた具体的なロードマップはあるのか
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現金約500億円を、成長投資にどう振り向けるのか
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XR・投資育成事業を、いつまで「将来枠」に留めるのか
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配当・自己株取得と成長投資の優先順位
現状では、「守りとしては優秀、攻めとしては弱い」という評価に近い。
論評
コロプラの第17期決算は、成熟期ゲーム会社の現実を数字で突き付けた決算である。
安定収益、健全財務、潤沢な現金──いずれも揃っているが、成長の兆しは見えにくい。
本決算を「再成長への覚悟が問われる局面」と位置付けたい。
次に市場が問うのは、この安定を、あえて崩してでも成長に向かう意思があるのか。
その答えが示されない限り、企業評価は大きく変わらないだろう。
