
スタートアップ資本戦略の静かな支配と、裏で進む“取引条件付きの囲い込み”
はじめに
2025年4月18日、グロースパートナーズ株式会社(代表:古川徳厚)を中心とする投資ファンド「GPファンド」が、東京証券取引所グロース市場上場のビープラッツ株式会社(証券コード:4381)株式を実質的に45.78%保有していることが大量保有報告書により明らかとなった。
表向きには「業務資本提携」とされるが、その中身は新株予約権と転換社債を通じた“潜在支配構造の布石”に他ならない。
グロースパートナーズ株式会社(GPファンド)とは
グロースパートナーズ株式会社は、代表取締役の古川徳厚氏が率いる独立系投資ファンドである。
主に新興企業、特にSaaSやITベンチャーへの投資を積極的に行い、成長支援を通じてキャピタルゲインを狙うビジネスモデルを展開している。
自己資本をベースに、借入なしで投資活動を行うため、機動的な投資判断と意思決定が特徴的である。
ビープラッツ株式会社の概要
ビープラッツ株式会社は、東京証券取引所グロース市場に上場する企業で、ビジネス向けサブスクリプション管理プラットフォーム「Bplats」を提供している。
主な事業内容は、企業がサブスクリプション型のビジネスモデルを容易に導入・運用できるように支援するSaaSサービスである。
技術力には定評がある一方で、上場後も赤字体質から完全に脱却できておらず、持続可能な利益体質の構築が課題となっている。
資本の構造:新株予約権+転換社債での支配網
- GPファンドが保有する潜在株式は以下の2種:
- 第6回新株予約権:694,400株
- 第1回無担保転換社債型新株予約権付社債:347,200株相当
- 合計:1,041,600株相当(発行済株式2,467,441株に対して29.68%)
- グロースパートナーズ代表個人と法人の共同保有分を合わせると計2,083,200株(45.78%)
潜在株式を用いた支配であり、発行済株の直接取得ではなく、「将来的な行使により支配可能な構造」である点が注目される。
引受条件には“制限付きロックアップ”と優先交渉権
- 新株予約権と社債は2025年4月15日~2026年4月14日まで行使不可
- 譲渡についても発行者の取締役会決議が必要
- さらに、2030年4月14日までの間、第三者への株式等発行時にはGPファンドに優先的な引受交渉権が付されている
これは極めて強力な「将来の資金調達や希薄化を制御する権利」であり、実質的には「次のラウンドも握るぞ」というシグナルである。
資金の出どころと背景
- 投資総額:約1億5,069万円(150,694千円)
- 原資はGPファンドの出資者からの資金=自己資本ベースでの出資
- 借入なし、自己資金100%調達という点は財務的には健全
ビープラッツにとっての意味とは?
ビジネスサブスクリプション支援のSaaSスタートアップとして、ビープラッツはグロース上場後も赤字体質から脱却できていない。
ここでの資金調達は再成長のための中規模調達ではあるが、その対価として株主構造の半数近くをGPファンドに委ねるという取引である。
これは、株価の希薄化以上に、資本政策の主導権を外部ファンドに明け渡す構造転換を意味する。
「握られた未来」は果たして有益か
GPファンドのやり口は巧妙であり、明らかに敵対的ではない。
だが報告書を読めば、ビープラッツの今後の増資・株式発行・資本政策のすべてが、GPファンドの同意と引受意向の有無に左右される構造が既に出来上がっている。
その力学は、スタートアップ企業にとっては支援であり、同時に拘束でもある。
――未来の成長を支えるのか。 それとも、成長の果実を“先取りされる”のか。 投資家の目が試されるのは、今この瞬間である。