株式会社アルトナー【決算分析】

株式会社アルトナー(2163)の直近5年間の財務分析

売上高・利益の年度別推移

直近5期(2019年度~2023年度に相当。アルトナーの場合は決算期が毎年1月末)における、売上高・各利益の推移は以下の通りです​artner.co.jp。全体として売上規模の拡大に伴い利益も順調に増加しており、特に営業利益は売上高以上の伸び率を示しています。

決算期(※1) 売上高 (百万円) 営業利益 (百万円) 経常利益 (百万円) 当期純利益 (百万円)
2021年1月期 (第59期) 7,174 887 910 628
2022年1月期 (第60期) 8,102 1,010 1,032 728
2023年1月期 (第61期) 9,242 1,194 1,203 895
2024年1月期 (第62期) 10,110 1,522 1,532 1,051
2025年1月期 (第63期) 11,125 1,810 1,821 1,260

※1 単位:百万円(1百万円=100万円)。アルトナーの決算期は毎年1月末時点(○○年1月期)です。

最近の業績は連続増収増益基調で、5年前(2021年1月期)と比べ2025年1月期の売上高は約1.55倍、当期純利益は約2倍に拡大しています。2025年1月期は売上高1,112.6億円(前年同期比+10.0%)、営業利益18.10億円(+18.9%)を達成し、営業利益率は16.3%と収益性が向上しました。

前年は研修施設拡張や人材採用費用の増加があったものの、売上増加で吸収し過去最高益を更新しています

このように、高水準の稼働率や技術者単価の上昇に支えられ、利益率は年々改善傾向にあります。

キャッシュフローの年度別推移

次に、直近5期のキャッシュフローの状況です。営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)は一貫してプラスで推移し、本業から安定して現金収入を得ていることが分かります。

一方、投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)は設備投資等が小規模なためほぼゼロ近辺で推移しています。

財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)は毎期マイナスで、これは主に利益に応じた配当支出によるものです。

決算期 営業キャッシュフロー (百万円) 投資キャッシュフロー (百万円) 財務キャッシュフロー (百万円)
2021年1月期 899 △30 △232
2022年1月期 770 33 △270
2023年1月期 872 △24 △426
2024年1月期 1,126 △5 △818
2025年1月期 1,180 △49 △819

※単位:百万円。「△」はキャッシュの流出(マイナス)を表します​

営業CFは当期純利益の水準と概ね一致しており、稼いだ利益が着実に現金化されていることを示しています。

投資CFは毎期数千万円規模の小幅な出入りにとどまり、設備投資負担が軽微であることが伺えます

財務CFのマイナス幅は年々拡大していますが、これは利益成長に伴い配当支払いが増加しているためです(後述のように近年の配当性向は約70%と高水準)。

フリーキャッシュフロー・現金残高・財務指標の推移

上記より、フリーキャッシュフロー(FCF:営業CF+投資CF)は毎期プラスを維持しています。

FCFは営業CFが潤沢で投資負担が小さいことから安定的に創出され、余剰資金は配当支払い後も現金として積み上がっています。

実際、現金及び現金同等物の期末残高はこの5年で約1.5倍に増加しました​

併せて、自己資本比率やROE(自己資本利益率)など主要な財務指標の推移を整理します。

決算期 フリーキャッシュフロー (百万円) 現金同等物の期末残高 (百万円) 自己資本比率 (%) ROE (%)
2021年1月期 869 3,019 70.5 21.5
2022年1月期 803 3,554 70.4 21.7
2023年1月期 848 3,975 71.4 23.5
2024年1月期 1,121 4,277 69.9 25.3
2025年1月期 1,131 4,588 70.4 28.1

※FCFは営業CF+投資CF(上表より算出)。その他数値は非連結ベース。​

自己資本比率は概ね70%前後で推移しており、非常に高い水準を維持しています。

これは同社がほぼ無借金経営であり、事業拡大を自己資本と内部留保によって賄っていることを示しています。

ROE(自己資本当期利益率)は21~28%と高水準で推移し、特に利益成長に伴い直近では28.1%まで上昇しました​。

高いROEは効率的な自己資本活用を意味し、株主にとっても魅力的な指標と言えます。

財務内容の特徴と安定性・今後の懸念点

財務内容の特徴・安定性: アルトナーの財務は、総じて堅実かつ安定しています。

売上・利益が右肩上がりで推移する中、本業のキャッシュ創出力も高く、営業CFは当期純利益と同水準のプラスを継続しています。

これは収益の質が高く、売上債権の増加や在庫負担などによる利益とキャッシュの乖離が小さいことを意味します。

さらに、設備投資負担が軽微な事業モデル(エンジニア派遣を中心とした人材サービス)であるため、大規模な資金投下をせずとも成長できており、フリーキャッシュフローも安定的にプラスです。その結果、手元資金は着実に積み上がり自己資本比率は約70%と高水準を維持、無借金経営による財務基盤の厚みが確保されています。

高い収益性と堅固な財務基盤を背景に、業績好調時には増配も継続しており、株主還元と内部留保のバランスをとりながら企業規模を拡大している点が特徴です。

今後の懸念点: 現時点で財務面から大きな不安材料は少ないものの、いくつか注意すべき点もあります。

まず、近年は営業利益率の改善によって高いROEを実現していますが、この背景にはエンジニア派遣需要の拡大と技術者単価の上昇による売上成長が寄与しています。

将来的に景気動向や顧客企業の開発投資動向により技術者需要が減退した場合、売上の伸び鈍化や稼働率低下を通じて利益率が押し下げられるリスクがあります。

また、人件費(技術者給与)の上昇傾向が続けば、十分な単価転嫁ができない場合に利益率が圧迫される可能性もあります。

もっとも、同社は固定費負担が比較的軽く身軽な財務構造であるため、景況悪化時にも柔軟な対応が可能と考えられます。

さらに、財務CFがマイナスである点については、前述の通り積極的な配当実施が主因です。近年の配当性向は約70%と高く、潤沢な営業CFで賄えている間は問題ありませんが、仮に業績が停滞・悪化した場合には内部留保の減少やキャッシュ流出が財務の安定性に影響を及ぼす懸念があります。

そのため、利益動向と配当方針のバランスには引き続き注意が必要です。

総じて、アルトナーの直近5年間の財務状況は、堅調な業績拡大と高い収益性に支えられた安定した内容と言えます。

潤沢なキャッシュ創出により高い自己資本比率と手元流動性を確保しており、財務の安全性は高水準です。

一方で、高成長を前提としたコスト管理や資金配分(配当等)を行っている側面もあるため、今後は外部環境の変化や成長鈍化局面に備えた慎重な財務運営が求められるでしょう。

現時点では大きな懸念はないものの、営業CFと利益の動向、設備投資計画の有無、配当政策などを総合的に注視しつつ、持続的な成長と財務安定性の両立を図っていくことが重要となります。

参考文献: 有価証券報告書(第59期~63期)および決算説明資料等​artner.co.jpartner.co.jpartner.co.jpartner.co.jpartner.co.jpなど、公表された公式情報に基づいて作成しています。

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