
前渡金の渦”に沈むキャッシュと信頼、資金循環不全が生んだ中間決算の真相
「黒字化」は語られ、「現金流出」は黙された
2025年3月期第23期中間決算。
フォーシーズHDは、売上1,190百万円(前年同期比+6.9%)、純損失58百万円と発表し、赤字幅の縮小を強調した。
表向きは、「通販」「卸売」セグメントの黒字化と新商品の進捗、再エネ分野への事業拡大など、ポジティブな要素を丁寧に並べた内容であった。
だが──
貸借対照表とキャッシュフロー計算書、そして注記の一文一文を読み込んだとき、まったく異なる“決算の地層”が露出する。
それは、「キャッシュを失いながら、帳簿上の資産だけが積み上がっていく企業の姿」である。
のれん、棚卸資産、前渡金──これらすべてが膨らむ一方、現金は半年で582百万円消失。
しかも、その原因となる投資の回収予定は、いまだ“交渉中”であり、現金化の見通しは立っていない。
異様な前渡金の急膨張、そして現預金の消失
2025年3月期・第23期中間決算。フォーシーズHDは売上1,190百万円(前年同期比+6.9%)を計上しながらも、営業損失73百万円、経常損失72百万円、純損失58百万円を記録。通期黒字化には程遠い赤字構造を露呈した。
だが、より深刻なのはキャッシュフローとバランスシート上の異常な数値の変化である。
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営業キャッシュフロー:+355百万円(前年同期+23百万円)
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投資キャッシュフロー:▲494百万円(前年同期▲0.6百万円)
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財務キャッシュフロー:+267百万円(前年同期+66百万円)
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現金および同等物:204百万円(前期末786百万円)
このように、現預金は半年で約582百万円消失している。その主因は、「再生可能エネルギー事業への投資」として計上された1,281百万円の“前渡金”である。
急増した前渡金──1,281百万円の“回収なき資産
まず注目すべきは、BS上の「前渡金」勘定である。これは、仕入れや設備投資などに対し、まだサービスや商品が納入されていない段階で支払った現金のことであり、本来は短期間で費消・清算されるべき流動項目だ。
しかし、今期のフォーシーズHDでは、その残高が
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前期末:399百万円 → 中間期末:1,281百万円(+882百万円、221%増)
この巨額の前渡金は、2024年12月設立の連結子会社「ファンタスティックフォー第1号合同会社」を通じて、株式会社ネクスタから取得した太陽光発電所の“土地権利”97物件分に関連している。
しかもこれらの物件のうち、50件のみが売却契約済み。残りの47件は交渉中のままであり、いまだ売却の目処は立っていない。
つまりこの前渡金は、キャッシュアウトは完了しているにもかかわらず、売上にもならず、資産回収もされていない“宙ぶらりんの資金”なのである。
現金の消失──営業黒字の陰で、資金繰りは限界に近づく
PLでは、営業損失73百万円と前年から微増しているものの、セグメント別では「通販」「卸売」が黒字化し、一定の構造改革が進んでいるかのように見える。
だが、CF計算書を見れば、その裏側が露呈する。
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営業CF:+356百万円(前年同期:+23百万円)
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投資CF:▲494百万円(前年同期:▲0.6百万円)
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財務CF:+267百万円(前年同期:+66百万円)
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期末現預金:204百万円(前期末:786百万円、▲582百万円)
この「営業黒字とキャッシュフローの解離」は、会計上の利益では黒字でも、現金は流出し続けていることを意味する。
注目すべきは、キャッシュインに貢献した項目の多くが、引当金増(+33百万円)、のれん償却(+40百万円)、棚卸資産増(+265百万円)など、帳簿上の調整項目による黒字化効果であること。これは、企業の資金繰りに何ら寄与していない“利益演出構造”である。
「借入で時間を買う」経営構造の危うさ
投資CFで流出した資金は、ほとんどが前述の太陽光発電所権利取得費689百万円。にもかかわらず、営業活動で得られた資金はたったの356百万円にすぎない。
では、どう資金を補ったか?答えは明確だ。
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短期借入:+345百万円
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長期借入:+201百万円
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借入金返済:▲278百万円
つまり、約270百万円の純調達を行い、現金を“借金で補った”構図が浮かび上がる。
このモデルは、M&Aが短期で収益化されなければ回転不全に陥るリスクが高く、売却遅延・工事遅延が起これば即座にキャッシュが詰まる“臨界点構造”である。
のれん、資産回転、GC注記──すべてが揃った危機構造
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のれん増加:253百万円(前期末186百万円、+36%増)
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商品+製品在庫:607百万円(+269百万円)
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営業CFマイナスとならないよう“引当金+償却”で利益補填
そして、すべてを覆うのが、継続企業の前提に関する注記(GC注記)の存在である。
監査法人は明確に記す:
「当期も黒字化できておらず、キャッシュが減少。重要な不確実性が存在する」
これは、“もし状況が改善しなければ、会社が1年以内に資金ショートする可能性がある”ということを示している。
回収されない資産と、止まらない会計処理の末に
フォーシーズHDは、言葉としては「黒字化」「新規事業拡大」「ブランド開発」「再エネ推進」と語っている。
だが、決算書のどこにも、“実際にそれが現金を生んだ”痕跡はない。
むしろ、現金は急減し、借入が増え、前渡金は増え続け、棚卸資産は積み上がる。のれんは償却され、純資産は減少を続ける。
これは「再エネへの挑戦」ではなく、“回らない事業を、回るように見せるための会計構造”ではないのか?
我々論評社は、こう問う。
この企業が購入しているのは“未来”なのか、それとも“時間”なのか。
現預金が尽きるその瞬間までに、果たして売却契約は成立し、現金は戻るのか?
次回決算で、前渡金が売上に変わるのか、減損として消えるのか──
我々はその1行の変化をも見逃すことなく、徹底的に追及し続ける。