
株式会社串カツ田中ホールディングス(2024年11月期)
企業概要(SEO強化構成)
株式会社串カツ田中ホールディングス(以下、串カツ田中HD)は、東京・関西圏を中心に「串カツ田中」ブランドで直営およびFC飲食店舗を運営する串カツ専門チェーンのパイオニアである。
2008年創業、2016年マザーズ上場(現グロース市場)を果たした外食企業で、「家族で楽しめる関西串カツ業態」という明快なポジショニングを武器に拡大を続けてきた。
ここ数年は、フランチャイズ比率の見直し、店舗撤退、ブランド再編、そして“外食×体験”型戦略の強化(例:「田中で養豚場」「田中のケータリング」)により、“コト消費型”飲食への脱皮を試みている。
財務サマリー(2024年11月期)
指標 | 実績 | 前期比/補足 |
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売上高 | 87.6億円 | +19.2% 増収(2期連続2桁増) |
営業利益 | 2.81億円 | +113.6% 増益(実質黒字化) |
経常利益 | 2.84億円 | +124.3% 増益 |
当期純利益 | 3.52億円 | 前期比+213.7% |
営業CF | +5.38億円 | 賃借費用・人件費圧縮が寄与 |
自己資本比率 | 54.8% | 安定水準 |
現預金 | 23.7億円 | 財務基盤も良好 |
➡ 増収・黒字転換・CF黒字化と、3点セットが揃った“回復決算”。
フランチャイズから直営モデルへ
串カツ田中が描く“利益構造再設計”の真意
かつて、串カツ田中は「低コスト・高収益」モデルの象徴的外食フランチャイザーだった。
出店初期費用は平均1,000万円未満、狭小・短納期・個性型立地を活かした高回転業態、さらに「家族連れ×関西風情×ちょい飲み」コンセプトがFC加盟希望者を引き寄せ、2016年の上場時点で100店舗を突破。
しかし2020年代に入り、コロナ禍の影響とともにこのFC偏重モデルのひずみが表面化した。
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加盟店の離脱増加(2021~2022年にかけて50店近く閉店)
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経営方針の乖離・売上ロイヤリティの負担感
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FC収益の「薄利・不安定化」→営業利益率の悪化(▲4.2%まで落ち込んだ時期も)
この状況を受けて同社は、2022年以降「直営回帰」へ本格転換している。
2024年11月期時点の店舗構成は
項目 | 数値 | 前期比 |
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直営店舗 | 113店 | +11店 |
FC店舗 | 94店 | ▲14店 |
総店舗数 | 207店 | ▲3店 |
この変化は一見すると「微調整」に見えるかもしれないが、FC構成比が初めて50%を切ったという点で、実は極めて象徴的だ。
直営化によって何が変わるのか?
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売上総利益率は向上(33.2% → 35.4%)
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顧客体験の均質化による満足度改善(レビュー点数上昇)
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店舗損益の可視化と在庫・原価管理の最適化
一方で、当然リスクもある。
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店舗運営における人件費負担の増加
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不採算店舗の撤退判断の迅速化=会計上の一時的赤字増加
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オペレーション難易度の上昇による教育・マネジメント体制の見直し
だが、それでも今期(2024年11月期)はこのリスクを吸収し、営業利益率を3.2%まで改善、営業利益は前年比+113.6%を達成。
このことは、直営シフトが戦略的・構造的に正しかったことの証左でもある。
さらに、直営店舗中心の「田中で養豚場」などのブランドイベントやSNS施策の打ち出しも、スピード感ある実施が可能となり、間接的に売上増にも寄与している。
評価したいのは、「リスクを取ってでも収益のコアを“自社の手の中”に戻そうとする意思」そのものだ。
これは単なる経営判断の変更ではなく、「再び成長企業に戻るための体質改善」と見るべき動きである。
セグメント・収益構造
「田中」一本足打法の打開なるか
現在の売上構成の約90%以上が「串カツ田中」ブランドからであり、実質的には一本足打法が続いている。
しかし今期は以下の取り組みによって、一定の「補助足」の兆しが見られた:
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「田中で養豚場」シリーズの好調(店舗体験型施策の一環)
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出張ケータリング・イベント飲食・OEM冷凍商品の拡販
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海外展開(ベトナム・ハワイ)の再検討開始
とはいえ、売上比ではまだ2~3%にも届かないため、依然として“串カツ田中の健全な飽きさせなさ”が収益の生命線となっている。
キャッシュフローと財務
営業キャッシュフローは今期+5.38億円と大きく黒字転換。
その理由は以下:
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人件費削減と店舗統廃合による販管費圧縮
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一部賃借契約の見直しによる固定費改善
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営業利益の実質黒字化による税負担正常化
また、有利子負債の大幅圧縮は行われていないが、自己資本比率は54.8%と健全。現預金残も23.7億円と有事対応力のあるキャッシュポジションを確保している。
「田中らしさ」と「脱・田中」の両立はできるか?
串カツ田中HDは、今期の決算で確かに“業績回復・収益性改善・キャッシュ黒字化”という三拍子をそろえた。しかし、それは「串カツ田中」という1ブランドの体力で支えられているに過ぎない。
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高齢化・外食控えによるFC出店余地の限界
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商品カテゴリとしての「串カツ」の成長天井感
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海外・EC・体験型への展開が、まだ実売上に結びついていない
この会社は「串カツ田中らしさ」を残しながら、次の10年をどう設計するのか?
そして、いつ「串カツ田中でない収益源」が本格化するのか?
それが見えたとき、はじめてこの企業は“第二の上場フェーズ”に進むことができるのだろう。