マッコーリー・バンク、アライドアーキテクツに38.57%保有—新株予約権9,400万株取得の衝撃


大量保有報告書 / 6081

マッコーリー・バンク、アライドアーキテクツに38.57%の大量保有を初公示——新株予約権9,400万株の一括取得が潜在的支配力を生む
普通株式357,000株に加え、第22回・第23回新株予約権9,400万株(潜在株式換算)を市場外で一括取得。消費貸借契約(借株400,000株)と新株予約権買取契約が重なる複層的な法的構造は、単純な保有比率では測れない実質的な影響力を示している。
発行体 アライドアーキテクツ株式会社
証券コード 6081(東京証券取引所グロース市場)
提出者 マッコーリー・バンク・リミテッド(Macquarie Bank Limited)
報告義務発生日 2026年5月7日
提出日 2026年5月13日
根拠条文 金融商品取引法第27条の23第1項
発行済株式総数 15,899,482株(2026年5月7日現在)
直前報告書 該当なし(新規)

保有株券等総数
9,757,000
株(普通株357,000+潜在9,400,000)

株券等保有割合
38.57%
潜在株式9,400,000株を含む計算

取得資金
4,510千円
自己資金(新株予約権対価のみ)

借株(消費貸借)
400,000株
中村壮秀氏から消費貸借

事実整理
提出者 マッコーリー・バンク・リミテッド(Macquarie Bank Limited、豪州法人、設立1983年4月26日)
所在地 オーストラリア・シドニー、1 Elizabeth Street Level 1, NSW 2000
代表者 オリビア・アン・シェパード(ディヴィジョン・ディレクター)
事業内容 銀行業
日本連絡先 マッコーリーキャピタル証券会社 コンプライアンス部 渋谷園子
保有目的 純投資
重要提案行為等 記載なし
普通株式保有数 357,000株
新株予約権(潜在株式) 第22回:8,900,000株相当 + 第23回:500,000株相当 = 合計9,400,000株
保有株券等の数(総数) 9,757,000株(普通株+潜在株式)
株券等保有割合 38.57%(発行済15,899,482株+潜在株式9,400,000株に対して)
取得資金合計 4,510千円(自己資金のみ・新株予約権取得対価)
担保契約等 新株予約権買取契約(発行者との間)・消費貸借契約(中村壮秀氏との間、400,000株)
本報告書の位置づけ——複層的な法的構造の解読
38.57%という保有割合の内訳:普通株は2.2%、残りは「潜在株式」

本報告書の最大の特徴は保有割合38.57%の構成にある。実際に保有する普通株式は357,000株にとどまり、発行済株式15,899,482株に対する実質的な比率は約2.2%に過ぎない。38.57%という数値が生じる理由は、大量保有報告書の計算式において分子・分母の双方に新株予約権の潜在株式数(9,400,000株)が加算されるためだ。すなわち、現時点では株式ではなく「権利」として保有しているに過ぎないが、法的にはその潜在的影響力を全株主に開示する義務が発生する。

新株予約権の取得構造

第22回新株予約権:89,000個(1個あたり100株換算)=8,900,000株相当。取得単価1個あたり50円。第23回新株予約権:5,000個(1個あたり100株換算)=500,000株相当。取得単価1個あたり12円。いずれも2026年5月7日に市場外(相対取引)で一括取得しており、発行体(アライドアーキテクツ)との新株予約権買取契約に基づく。取得対価の合計(89,000個×50円+5,000個×12円)は約450万円であり、これが取得資金4,510千円の実体となる。

新株予約権が行使された場合、アライドアーキテクツは最大9,400,000株の普通株式を新規発行することになる。その株式数は現発行済株式数15,899,482株の約59%に相当しており、潜在的な希薄化は既存株主にとって重大な意味を持つ。

直近60日間の取得・処分状況
年月日 種類 数量 割合 市場区分 区分 単価
2026年4月22日 普通株式 40,500 0.16% 市場内 処分
2026年4月22日 普通株式 120,000 0.47% 市場外 取得 貸借
2026年4月23日 普通株式 2,500 0.01% 市場内 処分
2026年4月27日 普通株式 400,000 1.58% 市場外 取得 貸借
2026年5月1日 普通株式 120,000 0.47% 市場外 処分 返却
2026年5月7日 第22回新株予約権 8,900,000株相当 35.18% 市場外 取得 1個あたり50円
2026年5月7日 第23回新株予約権 500,000株相当 1.98% 市場外 取得 1個あたり12円
消費貸借契約(借株)の構造

4月22日・4月27日の市場外「取得」はいずれも「貸借」と記載されており、中村壮秀氏(個人)からの株式消費貸借契約(借株)によるものだ。4月22日に120,000株、4月27日に400,000株を借り入れ、5月1日に120,000株を返却している。残余の約280,000株の扱いは本報告書の記載からは明確でないが、担保契約欄に「消費貸借契約・借株数:合計400,000株」と記載されており、返却義務のある借株が継続中とみられる。借株を利用した市場内売り(4月22日40,500株・4月23日2,500株)はショートポジションを通じたヘッジ機能を果たしている可能性がある。

取得主体の分析
マッコーリー・バンク——デリバティブ・ストラクチャードファイナンスの大手プレーヤー

Macquarie Bank Limitedは1983年設立のオーストラリア系大手金融機関であり、マッコーリー・グループ(Macquarie Group)の中核銀行子会社として機能する。日本ではマッコーリーキャピタル証券会社を通じて事業を展開し、ストラクチャードファイナンス・インフラ投資・デリバティブ組成の分野で実績を持つ。

今回の取引は保有目的を「純投資」としているが、新株予約権の大量取得・借株・市場内売却という複合的な手法は、銀行のデリバティブ部門が組成するエクイティ・ファイナンス・スキームの典型的な構造と合致する。すなわち、アライドアーキテクツが資金調達のために発行した新株予約権をマッコーリーが引き受け、そのリスクをヘッジしながら段階的に行使・株式化・売却するという「新株予約権ファイナンス(いわゆるMSCB型に類似)」の一形態として読み解くことが可能だ。

なぜアライドアーキテクツなのか
事業概要
SNSマーケティングSaaS
アライドアーキテクツはSNSマーケティング支援・UGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームを提供する東証グロース上場企業。国内外の企業向けにSNS運用・インフルエンサーマーケティング・EC連携サービスを展開する。

資金調達の背景
新株予約権発行による資金調達
グロース市場上場の中小型企業が新株予約権を活用した資金調達を行う際、国内外の金融機関が引受先となるケースは珍しくない。今回のマッコーリーによる新株予約権取得は、アライドアーキテクツ側の資金ニーズに応じた形での引受であり、双方の合意の下で設計されたスキームとみられる。

希薄化リスク
最大59%の潜在的希薄化
9,400,000株相当の新株予約権がすべて行使された場合、既存株主の持分は理論上約37%希薄化される。グロース市場での新株予約権ファイナンスに対しては既存株主・市場関係者の目線が厳しくなる傾向があり、行使条件・行使時期・行使価格の詳細が今後の情報開示において重要な焦点となる。

ガバナンス
既存株主との利益相反の管理
マッコーリーが純投資を掲げつつも新株予約権の段階的行使・売却によって既存株主に希薄化をもたらす構造は、経営陣と外部株主の間の情報格差を生みやすい。株主総会での説明責任・取締役会の独立性が問われる局面が生じ得る。

関係者構造
大量保有者(引受人)
Macquarie Bank Limited
豪州シドニー / 設立1983年4月
デリバティブ・ストラクチャードファイナンス
日本連絡:マッコーリーキャピタル証券 渋谷園子

保有構造
新株予約権買取契約+消費貸借
第22回新株予約権:89,000個(8,900,000株)@50円
第23回新株予約権:5,000個(500,000株)@12円
借株:中村壮秀氏より400,000株

発行体
アライドアーキテクツ株式会社(6081)
東証グロース / SNSマーケティングSaaS
発行済普通株式:15,899,482株
(新株予約権全行使後:最大25,299,482株)

シナリオ分析
Scenario 01 — 段階的行使・売却
新株予約権を行使しながら市場で売却
マッコーリーが市場環境・株価水準に応じて新株予約権を段階的に行使し、発行された普通株式を市場で売却することで投資回収を進めるシナリオ。アライドアーキテクツにとっては段階的な資金調達が実現するが、既存株主には希薄化が継続的に生じる。変更報告書の提出が頻繁に生じる展開が予想される。

Scenario 02 — 未行使・満期消滅
株価条件が未達で行使されずに消滅
新株予約権の行使価格を株価が下回る状況が続いた場合、マッコーリーが行使を断念し満期を迎えるシナリオ。取得対価の約450万円が損失となるが、借株返済・ポジション解消という形で関与が終了する。アライドアーキテクツにとっては希薄化が回避されるが、資金調達目的が達成されない。

Scenario 03 — 第三者への権利転売
新株予約権をファンド等に転売
マッコーリーが取得した新株予約権を別の投資家に転売するシナリオ。この場合、転売先から新たな大量保有報告書の提出が生じ、実質的な支配構造が変化する。スキームの組成者としてのマッコーリーの役割と最終投資家が分離する構造は、エクイティ・デリバティブ市場の一般的な慣行として存在する。

論評

マッコーリー・バンクがアライドアーキテクツに38.57%という突出した保有割合を公示した事実は、普通株保有による支配的参入ではなく、新株予約権9,400万株相当の一括取得と消費貸借を組み合わせたデリバティブ・ファイナンス・スキームの開始として読み解くことができる。「純投資」という保有目的の記載は形式を充足するものであり、実態としては発行体の資金調達ニーズに応えた引受スキームの設計者として機能しているとみるのが自然だ。既存株主にとっての最大の焦点は新株予約権の行使条件・行使時期・行使価格の詳細であり、これらが今後の情報開示において明らかになるにつれて市場の評価が定まってくると見るのが自然だ。

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