光通信、ドーン株を5.02%取得

“沈黙型オペレーター”の照準は、公共系SaaS銘柄

2025年7月25日、光通信株式会社(代表取締役:髙橋正人)は、株式会社ドーン(証券コード:2303)の株式165,700株を保有し、発行済株式3,300,000株のうち5.02%を取得したことを関東財務局に提出した大量保有報告書で明らかにした。

光通信は本報告書において「純投資」と明記しており、提案行為の予定もない。

だが、2024年以降活発化する同社の「沈黙型少数支配スキーム」の一環と考えれば、この5%ライン到達は、市場インフラ型SaaS銘柄に対する静かな資本関与の起点とも受け取れる。

取得の構造

光通信は、2025年5月19日から7月17日にかけて、計30回超におよぶ市場内および市場外取引を通じて、以下の通り165,700株を分散的に取得している。

  • 最小単位:100株(市場外取得、単価2,189〜2,273円)

  • 最大単位:4,300株(市場内、5月28日)

  • 累計取得資金:36,029,700円(全額自己資金)

1日の平均取得は約5,500株未満であり、価格変動を抑える高度に分散された“非イベント型保有構築”を採用。市場心理を乱さない静かな買付で、5%ラインを丁寧に突破している。

株式会社ドーンとは

株式会社ドーンは、以下のような事業領域で独自のポジションを築く中堅IT企業である。

  • 主力事業:消防・警察・自治体向けの通信・位置情報・通報連携SaaS

  • 製品群:情報共有プラットフォーム「NET119」、GIS活用ソリューション等

  • 財務体質:無借金経営・自己資本比率80%以上

  • 業績:年商約20億円、営業利益4億円前後で安定

  • 東証スタンダード上場(コード2303)

ニッチではあるが、防災・行政ITという“公共性の高い顧客基盤”を持つ点は、光通信の近年の公共事業対応型BtoB戦略とも高い親和性を示す

光通信の資本スタイル

本件における光通信の特徴は以下の通り。

  • 保有目的:「純投資」
  • 重要提案行為:「予定なし」

  • 保有株数:165,700株(5.02%)

  • 自己資金のみで取得(借入・レバレッジなし)

つまり、形式上は物言わぬ投資だが、決算説明会や株主総会における“実質的主張”が可能な最低限の影響力ラインを確保した構造である。

光通信は過去にも、以下のような低位株・地場IT企業に対して同様の5%保有を行っており、いずれも経営参加ではなく「株主としての存在感の可視化」によって企業行動に圧力をかけている。

  • システム情報(2022年):PBR是正とROE目標設定に影響

  • イントラスト(2023年):自己株買い強化とIR活動拡充

  • ジャストプランニング(2024年):非開示姿勢の改善促進

沈黙は続くのか、静かなる継続取得の可能性も

現時点での保有比率は5.02%と法定開示ラインぎりぎり。だが、以下の点から「段階的な買い増し→10%圏突入」の可能性は十分に残されている。

  • 株価流動性が低く、買い増しのコストが限定的

  • 業績が安定し、下値リスクが小さい

  • 自社株買いや増配に対する経営反応が“鈍い”点が投資家行動を誘発

つまり、この5%保有は終点ではなく、“戦略的エントリーポイント”である可能性がある。

光通信の資本戦術は、企業の意識外から始まる

光通信によるドーン株5.02%の取得は、市場にとっては小さな数字に見える。

しかし、そこには「制度に守られながら、制度内で支配圧をかける」ことを知り尽くした投資会社による、沈黙型ガバナンス構造の導入という深い含意がある。

企業にとって、声なき株主は最も対処の難しい存在だ。なぜなら、その沈黙が構造を動かす前兆だからだ。

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