Long Corridor、THE WHY HOW DO COMPANY株式15.09%を取得
大量保有報告書 分析

香港系ヘッジファンド Long Corridor、THE WHY HOW DO COMPANY(3823)の潜在株込み15.09%を取得──新株予約権引受と代表取締役からの借株による「CBアーブ型」ポジション

発行体 THE WHY HOW DO COMPANY(3823・スタンダード)
提出者 Long Corridor Asset Management Limited
提出日 2026年4月15日
報告義務発生日 2026年4月13日
株券等保有割合
15.09%
潜在株式込み
保有株券等(総数)
23,000,000
株・口
うち潜在株券等
21,000,000
第13回新株予約権
取得資金合計
756千円
借入+借株
Ⅰ 事実整理

2026年4月15日、香港拠点のヘッジファンド運用会社 Long Corridor Asset Management Limited(代表:ジェームズ・シンジュン・ツー)は、関東財務局長宛に大量保有報告書を提出した。報告義務発生日は2026年4月13日、発行体はスタンダード市場上場の THE WHY HOW DO COMPANY 株式会社(証券コード3823)である。

発行済株式等総数(2026年4月13日時点) 131,420,693株
普通株式保有数 2,000,000株
新株予約権(第13回) 21,000,000株相当
保有株券等(総数) 23,000,000株・口
株券等保有割合 15.09%
保有目的 純投資(投資一任契約に基づく投資権限)
重要提案行為等 該当なし
取得資金内訳 借入金756千円(メリルリンチ・インターナショナル)/借株2,000,000株

注目すべきは取得の構造である。普通株200万株は市場外で「借株」により取得され、第13回新株予約権2,100万個は同日、発行体からの第三者割当により新株予約権1個当たり3.6円で引き受けている。自己資金による現物株取得はゼロであり、報告上の「取得資金」は事実上借入金756千円と借株のみで構成されている。

Ⅱ Long Corridor Asset Management とは

Long Corridor Asset Management は、ジェームズ・ツー氏が創業した香港拠点のヘッジファンド運用会社である。ツー氏は香港の老舗ヘッジファンド Nine Masts Capital の共同創業者として知られ、その後独立して現ファンドを立ち上げた経歴を持つ。運用戦略は「クロスキャピタルストラクチャー投資」と称され、株式・転換社債・新株予約権を横断的に組み合わせることで、上下両側のリスクを制御しながらリターンを積み上げる設計になっている。運用資産は2024年第1四半期時点で米国上場銘柄ベース(13F)で約1億1,279万ドルと報告されており、上位10銘柄で98%超を占める高集中度ポートフォリオが特徴である。

同社は2016年に東京にリサーチ拠点を開設しており、日本株のアイデアソーシングを現地で行える体制を整えている。今回の提出書類上の事務連絡先が「東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング9階 Long Corridor Global Asset Management」となっているのはこの延長線上にある。ファンド群としては Long Corridor Alpha Opportunities Master Fund(LCAO)、MAP246 Segregated Portfolio、BEMAP Master Fund Ltd. の3本がビークルとして登場しており、Long Corridor Asset Management Limited はこれらに対して投資一任契約に基づき投資権限を行使する立場にある。

同社の戦略上、本件のような「新株予約権の第三者割当による引受+発行体関係者からの借株によるデルタヘッジ」は定石に近い。新株予約権はオプションとしての性格上、原資産株価が上昇すればペイオフし、下落すれば借株の空売りポジションで相殺される。相場の方向性を賭けるのではなく、ボラティリティと行使価額の設計、そして借株コストの差分から収益を引き出す典型的な「プライベート・エクイティ・リンクド・ノート」型の取引と見るのが自然である。

Ⅲ なぜ THE WHY HOW DO COMPANY なのか

THE WHY HOW DO COMPANY は普通株式数131,420,693株、時価総額約72億円、2026年4月16日時点の年初来安値は40円という小型株である。株価水準は極めて低く、浮動株比率も薄いため、現物市場での大口建玉形成は事実上困難に近い。こうした銘柄に対して純投資目的で15%超のポジションを構築する場合、市場外での第三者割当新株予約権の引受は合理的な選択肢となる。

さらに重要なのは発行体側の資金調達事情である。同社の有価証券報告書では、産業廃棄物処理事業の設備投資資金を第13回乃至第15回新株予約権の行使等により調達する方針が明示されており、新株予約権の行使が進まない場合には設備投資の進捗が遅れる可能性がリスク要因として記載されている。つまり発行体は新株予約権の「行使」を前提にキャッシュフローを組み立てている側であり、Long Corridor は「行使される側のオプション」を大量に引き受けたことになる。両者の関係は、通常のエクイティ投資よりも「プライベート・プレースメント型ファイナンスの提供者」に近い構図と捉えるべきだろう。

もう一つの論点が、借株の貸し手である。田邊勝己氏は同社の主要株主かつ代表取締役として位置付けられており、過去にも同氏と寺尾文孝氏を割当先とする第12回新株予約権が発行されている経緯がある。今回、Long Corridor 傘下の3ファンド(LCAO・M246・BEMAP)は田邊氏との間で2026年3月27日から2027年4月13日までの株式貸借契約を締結しており、貸借株数はLCAOが148万株、M246が16万株、BEMAPが36万株の計200万株である。報告書上の普通株200万株は、すべてこの田邊氏からの借株によって充当されていることが示唆される。

Ⅳ 取得パターン分析(最近60日間)
年月日 種類 数量 割合 市場内外 区分 単価
2026年4月8日 普通株式 2,000,000 1.31% 市場外 取得 借株
2026年4月13日 第13回新株予約権 21,000,000 13.78% 市場外 取得 1個3.6円(第三者割当)

取得のシークエンスは明瞭である。4月8日にまず田邊勝己氏からの借株により普通株200万株のショート・アベイラビリティを確保し、その5日後の4月13日に第13回新株予約権2,100万個を引き受けた。借株→オプション引受の順序は、新株予約権のデルタに対するヘッジ原資を事前に押さえたうえで引受契約を締結したことを示唆する。典型的な転換社債アービトラージャーの発注ロジックである。

構造上の注意点

取得金額として計上されているのは新株予約権の払込代金に相当する借入金756千円のみであり、普通株200万株は借株(自己資金ゼロ)として取得されている。報告書上の「取得資金合計」が極端に小さいのは、経済的実質としてのポジション規模(潜在株ベース2,300万株)を反映していないためであり、投資家が開示数値を読む際には注意が必要である。

Ⅴ 関係者構造
運用主体
Long Corridor Asset Management Ltd.
香港/投資運用業/James Xinjun Tu 代表
投資ビークル(3本)
LCAO / MAP246 / BEMAP
投資一任契約に基づきLong Corridorが投資権限を行使
ポジション
WHDC 普通株200万株+新株予約権2,100万個
保有割合15.09%
借株の貸し手
田邊勝己氏
WHDC代表取締役・主要株主。貸借期間は2026年3月27日〜2027年4月13日
借入先
Merrill Lynch International
ロンドン本社/金融商品取引業/借入額756千円
発行体
THE WHY HOW DO COMPANY
スタンダード市場/第13回新株予約権を第三者割当発行

契約関係で見逃せないのは、LCAO・M246・BEMAPの3ファンドが発行体との間で第16回新株予約権に係る引受契約を別途締結している点である。報告書の今回対象は第13回新株予約権であるが、同時期に第16回新株予約権についても譲渡制限付きの引受契約が存在することが明記されており、Long Corridor と発行体の関係は単一シリーズの取引にとどまらない継続的なファイナンス関係であることが読み取れる。

Ⅵ 市場への示唆

Long Corridor の保有は純投資かつ重要提案行為等なしと明示されており、経営への直接介入は想定されていない。しかし潜在株込み15.09%という水準は、行使が進んだ場合に希薄化インパクトとして現行株主に及ぶ規模である。仮に第13回新株予約権2,100万株がすべて行使された場合、現行発行済株式数1億3,142万株に対して約16%の希薄化となる計算であり、小型株としてのボラティリティは引き続き高止まりしやすい。

Scenario 1
行使進行シナリオ
発行体の産業廃棄物処理事業が計画どおり進捗し、株価が行使価額を上回る水準で推移すれば、Long Corridor は段階的に新株予約権を行使し市場売却する。発行体は想定どおり設備投資資金を確保するが、需給面では恒常的な売り圧力が発生する。
Scenario 2
CBアーブ継続シナリオ
株価がボックス圏で推移する場合、Long Corridor は新株予約権のガンマを取りに行くデルタヘッジを継続する。借株返済期限である2027年4月13日までの1年間、200万株の貸借ポジションが断続的に市場のボラティリティ供給源となる。
Scenario 3
行使停滞シナリオ
株価が行使価額を下回り続ければ新株予約権は行使されず、発行体の設備投資計画に影響が及ぶ。Long Corridor にとっても引受代金の減損は限定的だが、発行体側のダウンサイドリスクは報告書自体が示唆するとおり顕在化する。
論評

本件は、表面上は「香港ヘッジファンドによる15%超の取得」という大口保有の見出しをまとうが、実態は純投資ラベルの下で組まれたCBアーブ型のファイナンス取引であり、Long Corridor にとっては新株予約権の引受と代表取締役からの借株を組み合わせた定石的なデルタニュートラルの建付け、発行体にとっては産業廃棄物処理事業の設備投資原資を外部ヘッジファンドから調達する手段の一つ、と整理するのが適切である。そのうえで、第16回新株予約権にも別途引受契約が存在することを踏まえれば、両者の関係は一度限りのディールではなく、複数シリーズにまたがる継続的なファイナンス・パートナーシップの段階に入っていると見るのが自然だ。

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