オアシスがIIJを7.48%取得、重要提案行為を宣言
大量保有報告書

オアシス・マネジメントがIIJを7.48%取得
2日間・5,180,000株超の集中取得で一気に7%台へ、「重要提案行為」明記でNTT・KDDI二極支配構造への問いが始まる
発行体 株式会社インターネットイニシアティブ(3774)
提出者 オアシス マネジメント カンパニー リミテッド(Oasis Management Company Ltd.)
報告義務発生日 2026年4月24日
提出日 2026年5月7日
上場市場 東京証券取引所プライム市場
根拠条文 金融商品取引法第27条の23第1項

保有株数(総数)
1,372万株
13,723,994株(全額ファンド資金)

株券等保有割合
7.48%
発行済183,448,852株対比

取得資金合計
364億4,148万円
36,441,482千円(ファンド資金)

集中取得日
4月23〜24日
2日間で5,186,309株を取得

事実整理
発行体名称 株式会社インターネットイニシアティブ(3774)東証プライム市場
提出者 オアシス マネジメント カンパニー リミテッド(Oasis Management Company Ltd.)
設立年月日 2011年6月16日(ケイマン諸島法人)
代表者 フィリップ・メイヤー(General Counsel)
所在地 ケイマン諸島、グランド・ケイマン、ウグランド・ハウス
保有目的 ポートフォリオ投資および重要提案行為
重要提案行為等 株主価値を守るため、重要提案行為を行うことがある
保有株数(総数) 13,723,994株(全額ファンド資金)
発行済株式等総数 183,448,852株(2025年12月31日現在)
株券等保有割合 7.48%
直前の報告書の保有割合 記載なし(初回大量保有報告書)
取得資金合計 36,441,482千円(全額ファンド資金・自己資金ゼロ・借入なし)
担保契約等 該当なし
提出代理人 祝田法律事務所 弁護士 川村一博(東京都千代田区丸の内3-4-1新国際ビル9階)

本報告書の位置づけ:2日間で7%超に到達した集中取得の構造

本報告書は金融商品取引法第27条の23第1項に基づき、2026年5月7日に関東財務局長へ提出された初回の大量保有報告書だ。報告義務発生日は2026年4月24日であり、義務発生から13日以内の適正提出となる。直前の報告書に記載された保有割合は空欄であり、今回が初回の大量保有報告書である。

本報告書の最大の特徴は、60日間の取得ログに記録された取得が事実上2日間に集中している点だ。2026年3月13日に市場内で100株を取得した後、約6週間の沈黙を経て、4月23日に市場内6,800株・市場外300,000株(単価2,817円)、翌4月24日に市場外4,880,209株(単価2,761円)という大規模な取得を実行し、一気に7.48%という第三位株主水準に到達した。3月13日の100株取得は「地均し」として捉えるべきであり、本格的な参入は4月23〜24日の2日間と解釈するのが自然だ。総取得資金364億円のほぼ全額がこの2日間に集中しており、オアシスが長期的な分散取得を選ばず、機動的な大規模買い付けによる電撃参入を選択したことを示している。

直近60日間の取得状況(報告書記載分)
年月日 種類 数量(株) 割合 区分 取得/処分 単価
2026年3月13日 株券 100 0.00% 市場内 取得 非開示
2026年4月23日 株券 6,800 0.00% 市場内 取得 非開示
2026年4月23日 株券 300,000 0.16% 市場外 取得 2,817円
2026年4月24日 株券 4,880,209 2.66% 市場外 取得 2,761円

60日ログに記録された4件のうち、実質的な本体は4月23〜24日の市場外取引2件だ。4月24日の4,880,209株・単価2,761円という単一取引は、金額にして約134.7億円に相当する。これはオアシスが事前に特定の売り手(機関投資家または既存大株主)と相対交渉を行い、ブロック取引として一括取得したことを示しており、証券会社の仲介による相対取引がその背景として想定される。なお、取得資金総額364億円を保有総数13,723,994株で割ると平均取得単価は約2,653円と試算される。報告書提出時点前後の株価(2,733〜2,900円台)水準でのコスト感は市場参加者にとって重要な参照点となる。

取得主体の分析:オアシス・マネジメントの戦闘的アクティビズム

オアシス・マネジメント・カンパニー・リミテッドは、香港のセントラルを実質的な拠点とする資産運用会社であり、創設者のセス・フィッシャー(Seth Fischer)が2002年に設立した。日本、韓国、中国など東アジア市場における株主価値の解放を専門とし、企業との書簡交換・メディアへの情報公開・株主提案・訴訟提起まで多岐にわたる手法を駆使する「戦闘的アクティビスト」として市場での評価を確立している。

同社の代表的な日本案件として、大正製薬HDへの介入(MBO価格の不当性を公開書簡で指摘し価格引き上げを要求)、ツルハHDへの介入(低価格MBO案件での公開圧力)、花王への介入(ガバナンス改革要求)、KADOKAWA(8.86%取得)、ニデック(6.74%取得、永守氏の企業支配への懸念表明)などが挙げられる。IIJへの参入直前にはプラスアルファ・コンサルティング(8.02%取得、2026年4月23日義務発生)の大量保有報告書も同日付で提出されており、複数案件を同時並行で仕掛ける「多面展開」の手法が今回も確認できる。本報告書の提出代理人が祝田法律事務所・川村一博弁護士という点も、オアシスの過去の日本案件と一貫しており、組織的な日本市場介入の体制が整っていることを示している。

なぜこの企業なのか:IIJの株主構造とオアシスの介入仮説

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は1992年創業、国内初の商用インターネット接続サービスを開始した総合IT企業だ。ネットワークサービス及びシステムインテグレーション(SI)事業とATM運営事業の2セグメントで構成され、直近(2026年2月期第3四半期)は売上収益2,493億円(前年同期比+8.7%増)・営業利益244億円(+17.9%増)と増収増益を継続している。ROE約15%・自己資本比率約45%という財務的健全性を持ち、時価総額は約5,000億円規模(株価2,900円台、発行済約1.83億株)だ。

オアシスがIIJに着目した核心的な論点は、株主構造の特殊性にある。IIJの筆頭株主はKDDIとNTTグループが各11.5%程度を保有する「二極体制」であり、両者は事業上の競合相手でもある。この構造は、NTTが2023年に保有株を一部売却し、KDDIが筆頭株主として並立した経緯を持つ。さらに創業者の鈴木幸一会長(KS Holdings経由での間接保有)が経営の実権を握る「創業者支配×競合他社による大株主二極構造」という複合的なガバナンス課題がある。加えてIIJはNASDAQ上場廃止(ADR)という資本市場上の変化も抱えており、少数株主にとっての市場流動性と価値実現の機会が従来より制約される局面にある。オアシスが「株主価値を守るため」と宣言している文脈は、こうした構造的な課題に対する外部圧力の行使として読み解くことが適切だ。

関係者構造
大量保有者
Oasis Management Company Ltd.
ケイマン諸島法人。香港拠点。2002年セス・フィッシャー創設。東アジアの株主価値解放専門。7.48%取得・重要提案行為を明記。同日プラスアルファにも8.02%取得。

日本代理人
祝田法律事務所 川村一博弁護士
東京都千代田区丸の内3-4-1新国際ビル9階。オアシスの日本案件で継続的に代理人を務める専門事務所。プラスアルファ案件も同代理人。

発行体
株式会社インターネットイニシアティブ(3774)
東証プライム。創業者・鈴木幸一会長が経営主導。KDDI・NTTグループが各11.5%保有の二極構造。時価総額約5,000億円。決算発表2026年5月14日予定。

市場への示唆:3つのシナリオ
シナリオ A
株主還元強化・ガバナンス改革要求
オアシスがKDDI・NTTグループという競合他社が大株主として君臨する二極支配構造の解消と、少数株主へのリターン向上(自社株買い拡大・増配・政策保有株整理)を公開または非公開で要求するケース。ROE約15%という財務力を背景に、より積極的な株主還元が株価再評価につながると主張する展開が想定される。定時株主総会(2026年6月頃)に向けた経営陣との対話の成否が第一の焦点となる。

シナリオ B
MBO・非公開化への牽制と価格引き上げ圧力
オアシスが創業者主導の非公開化やMBOが低価格で実施されることへの牽制としてポジションを構築しているケース。大正製薬HD・ツルハHDでの実績パターンと一致しており、7.48%という保有水準は公開買付成立(3分の2以上の取得が一般的条件)を困難にする株式分布の変化として機能しうる規模だ。非公開化・TOBが発表された際の価格引き上げ交渉を通じたキャピタルゲインが出口として想定される。

シナリオ C
公開エンゲージメントと株主提案の段階的展開
経営陣との非公開対話が不調に終わり、オアシスがニデックへの参入時のように公開書簡・プレゼン資料の公開という段階的な公開圧力をかけるケース。競合他社がそれぞれ11.5%を保有するという利益相反構造の問題点を公開の場で指摘し、独立性強化・ガバナンス改革を要求する展開が想定される。2026年6月の定時株主総会での議案提案が最初の正式な焦点となる。

論評
オアシス・マネジメントがIIJに7.48%という第三の大株主水準での参入を公示した事実は、国内初の商用インターネット接続事業者として長年の実績を持つ優良IT企業に対して、「戦闘的アクティビスト」が初回報告書から「重要提案行為」を宣言するという性格の異なる株主が登場したことを意味しており、KDDI・NTTグループという競合他社による各11.5%の二極支配という構造的なガバナンス課題がオアシスの介入仮説の核心にあると読み解くことができる。2日間の集中取得で7%超に到達するという電撃的な参入手法は、長期的な分散取得による地均しを選んだアーカス・インベストメントのようなパッシブ投資家とは真逆の行動原理を示しており、オアシスが既に明確な要求項目を有し、その実現に向けた時間軸を意識しながら動いていることを示唆している。次の変更報告書が示す保有変動の方向、そして2026年5月14日に予定されるIIJの通期決算発表後の経営陣の資本政策に関するコメントが、この案件の性格を規定する最初の指標となると見るのが自然だ。

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