
背景
株式会社レーサムは2023年4月11日付の開示において、特別委員会の設置を公表した。同開示が対象とする事案は、同社従業員が工事の発注代金を水増しし、特定の下請会社から水増し分の一部をキックバックとして受領していたとされるものである。会社側の調査報告書は、本件を従業員が単独で行った事案と整理している。
また、同社元従業員をめぐっては、京都市内の物件取引に関連して複数の不動産会社から金銭を詐取したとして、2024年5月に逮捕されたことが報じられている。報道によれば、犯行には社内の会議室や会社名義の書類が用いられた可能性が指摘されている。
編集部は、これら二つの事案がいずれも社内の発注管理・印章管理・行動監督の仕組みに関わる点で共通していると考え、株主総会に先立ち、以下の事実確認を求めた。
質問事項
2023年4月11日付開示の対象事案について、調査報告書は従業員単独の行為と結論づけているが、当該従業員の上長を含む役員・管理職の認識または関与の有無について、調査はどの範囲まで行われたか。調査対象者の範囲と方法を確認したい。
水増し発注が行われていた期間中、発注金額の妥当性を検証する社内統制(相見積・発注承認・支払照合等)は機能していたか。機能しなかったとすれば、その原因をどのように特定したか。
元従業員による金銭詐取事案について、犯行に社内の会議室および会社名義の契約書類が用いられたとの報道がある。会社として当該行為をいつ、どのような経緯で把握したか。また、社内資産・印章の管理体制に不備はなかったか。
当該元従業員の行為により損害を受けたとされる取引先に対し、会社としての対応方針(事実関係の説明・協力の範囲等)をどのように整理しているか。
上記二事案を踏まえた再発防止策の実施状況と、その進捗を株主に対して継続的に説明する予定の有無を確認したい。
回答の取り扱い
編集部は、回答を受領した場合は原則として全文を本記録に追記し、回答がない場合はその旨を記録する。質問は開示資料および公知の報道に基づく事実確認であり、特定の結論を前提とするものではない。
経過の記録
- 2023.04.11「特別委員会の設置に関するお知らせ」開示
- 2024.05元従業員の逮捕が報じられる
- 2024.06.21論評編集部、本質問状を提出
- 2024.06回答受領。個別の事実関係への言及は限定的
- 2024.09.13ヒューリック株式会社によるTOB公表。その後、同社は上場廃止
本質問状に対する会社側の回答は形式的な範囲にとどまり、調査範囲や統制不備の原因に関する具体的な説明は得られなかったと見るのが自然だ。同社はその後のTOBにより上場廃止となったが、編集部は本記録を、上場企業のガバナンスをめぐる一次記録として保存する。

