オールド・ピークがグローバルセキュリティエキスパートを5.14%取得
大量保有報告書

オールド・ピーク・グループがグローバルセキュリティエキスパートを5.14%取得
「サイレント・アクティビスト」が初めて重要提案行為を明記——過去最高益更新中のサイバーセキュリティ小型株に香港ファンドが参入した意図を読む
発行体 グローバルセキュリティエキスパート株式会社(4417)
提出者(筆頭) オールド・ピーク・グループ・リミテッド(Old Peak Group Ltd.)
報告義務発生日 2026年4月28日
提出日 2026年5月11日
上場市場 東京証券取引所グロース市場
根拠条文 金融商品取引法第27条の23第1項

保有株数(実質)
78.6万株
786,300株(Old Peak Group単独)

株券等保有割合
5.14%
発行済15,309,600株対比

取得資金合計
20億7,484万円
2,074,843千円(顧客資金)

重要提案行為
明記あり
過去の「純投資」から転換

事実整理
発行体名称 グローバルセキュリティエキスパート株式会社(4417)東証グロース市場
筆頭提出者 オールド・ピーク・グループ・リミテッド(Old Peak Group Ltd.)2016年設立・香港
連名提出者(2) オールド・ピーク・リミテッド(Old Peak Limited)2002年設立・香港 ※実保有ゼロ
保有目的 長期投資並びに株主価値の向上及び保全のため重要提案行為等を行うことがある
重要提案行為等 株主価値の向上及び保全のため重要提案行為等を行うことがある
実質保有株数 786,300株(Old Peak Group単独。Old Peak Limitedは0株)
発行済株式等総数 15,309,600株(2026年4月28日現在)
株券等保有割合 5.14%
直前の報告書の保有割合 記載なし(初回大量保有報告書)
取得資金合計 2,074,843千円(全額顧客資金・自己資金ゼロ・借入なし)
提出代理人 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士 河村明雄・町田行人(東京都千代田区内幸町2-2-2富国生命ビル)
本報告書の位置づけ:「純投資」から「重要提案行為」への転換という宣言

本報告書で最も注目すべき点は保有目的欄の記載内容だ。「長期投資並びに株主価値の向上及び保全のため重要提案行為等を行うことがある」とあり、さらに重要提案行為等欄にも同様の文言が明記されている。市場関係者の間でオールド・ピークは「サイレント・アクティビスト」として知られており、過去の大量保有報告書では保有目的を「純投資(Pure Investment)」と記載するケースが多かったとされる。今回の「重要提案行為等を行うことがある」という初回報告書からの明示的な宣言は、オールド・ピークがグローバルセキュリティエキスパートに対して従来より踏み込んだ関与を想定していることを示す重要なシグナルだ。

連名提出者のオールド・ピーク・リミテッドの実質保有株数はゼロであり、総括表でも「0株・0%」と明記されている。ナカノフドー建設や杉村倉庫等の過去の案件でも同様の形式が確認されており、グループ持株会社(Old Peak Group Ltd.)が実際に保有し、親会社(Old Peak Limited)が形式的な共同保有者として連名するというのはオールド・ピークの標準的な報告形式だ。

直近60日間の取得・処分状況(報告書記載分)
年月日 数量(株) 割合 区分 取得/処分
2026年3月2日 17,500 0.11% 市場内 取得
2026年3月3日 13,200 0.09% 市場内 取得
2026年3月4日 13,000 0.08% 市場内 取得
2026年3月5日 8,000 0.05% 市場内 取得
2026年3月9日 15,900 0.10% 市場内 取得
2026年3月16日 10,000 0.07% 市場内 取得
2026年3月17日 10,800 0.07% 市場内 取得
2026年3月19日 13,100 0.09% 市場内 取得
2026年3月23日 17,200 0.11% 市場内 取得
2026年3月30日 14,600 0.10% 市場内 取得
2026年3月31日 14,600 0.10% 市場内 取得
2026年4月1日 14,600 0.10% 市場内 取得
2026年4月7日 34,500 0.23% 市場内 取得
2026年4月7日 20,000 0.13% 市場内 処分
2026年4月8日 12,000 0.08% 市場内 取得
2026年4月13日 10,000 0.07% 市場内 取得
2026年4月14日 27,400 0.18% 市場内 取得
2026年4月14日 16,000 0.10% 市場内 処分
2026年4月15日 16,000 0.10% 市場内 取得
2026年4月16日 13,600 0.09% 市場内 取得
2026年4月21日 13,600 0.09% 市場内 取得
2026年4月21日 8,000 0.05% 市場内 処分
2026年4月22日 5,100 0.03% 市場内 取得
2026年4月23日 31,500 0.21% 市場内 取得
2026年4月23日 12,000 0.08% 市場内 処分
2026年4月24日 10,000 0.07% 市場内 取得
2026年4月28日 32,100 0.21% 市場内 取得
2026年4月28日 10,000 0.07% 市場内 処分

60日間のログに記録された27件はすべて市場内取引だ。3月の期間は純取得のみで一定量を毎日積み上げているが、4月7日以降は同一日に取得と処分が対となる「対当取引」パターンが5回確認される。この「大きく取得し一部を即日処分する」手法は、流動性の低い小型グロース株において急激な株価への影響を避けながら目標水準へポジションを調整するオールド・ピーク特有の取引スタイルと解釈できる。取得資金20.7億円を保有株数78.6万株で割ると平均取得単価は約2,637円と試算され、52週安値(2,200円)に近い水準での構築が示唆される。

取得主体の分析:「沈黙の圧力」から「宣言」へ

オールド・ピーク・グループは2016年設立の香港籍投資運用会社だ。2002年設立の親会社オールド・ピーク・リミテッドとともに、日本の中小型株への集中投資で知られる。2025年のヘッジファンドランキングで世界トップクラスの成績を収めたと報じられており、藤田観光、杉村倉庫、ナカノフドー建設、ビリングシステム等の過去の投資先が確認されている。

市場関係者の間でオールド・ピークは「サイレント・アクティビスト」として認識されている。派手な公開書簡を出すオアシスとは異なり、表面的には経営介入をしないスタンスを保ちながら、海外ファンドが5%超を握るという事実そのものが経営陣に「潜在的な脅威」として機能するという「沈黙の圧力」モデルだ。今回の報告書で「重要提案行為等を行うことがある」を初回から明記したことは、この「沈黙」から踏み込んだ宣言への転換として市場は受け取るべきシグナルだ。

なぜこの企業なのか:業績絶好調・株価大幅下落という「業績と株価の乖離」

グローバルセキュリティエキスパート(4417)は、中堅・中小企業向けサイバーセキュリティに特化した専門企業だ。コンサルティング・脆弱性診断・教育・セキュリティソリューション・ITソリューションの5事業ドメインで構成され、「教育」を軸とした自衛力向上という独自アプローチを強みとする。ビジネスブレイン太田昭和の連結子会社という親子関係もある。直近の2026年3月期は売上高110.22億円(前年同期比+25.2%増)・営業利益22.38億円(+38.6%増)と全指標で過去最高を更新し、次期(2027年3月期)も25%増収・31%増益予想という成長軌道にある。ROEは35%前後と高水準だ。

それにもかかわらず株価は52週高値6,700円から義務発生日時点で約2,600円台と約60%もの下落を記録している。オールド・ピークが好む「業績成長と株価の大幅乖離がある割安小型株」のパターンと完全に合致する。さらにビジネスブレイン太田昭和の連結子会社という親子関係は、少数株主保護・独立性の問題という文脈でのエンゲージメントの余地を内包しており、「重要提案行為」の具体的な射程として意識されている可能性がある。

関係者構造
大量保有者
Old Peak Group Ltd.
2016年設立・香港ウォンチャイ。日本中小型株専門。2025年ヘッジファンドランキング世界トップクラス。初回から重要提案行為を明記。過去:藤田観光・杉村倉庫・ナカノフドー建設等。

日本代理人
渥美坂井法律事務所 町田行人弁護士
東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル。オールド・ピークの日本案件における継続的な代理人事務所。

発行体
グローバルセキュリティエキスパート(4417)
東証グロース。ビジネスブレイン太田昭和の連結子会社。時価総額約400億円。2026年3月期過去最高益。株価52週高値比▲60%。次期25%増収予想。

市場への示唆:3つのシナリオ
シナリオ A
親子関係の見直しと株価低評価の是正要求
オールド・ピークが「重要提案行為」として、ビジネスブレイン太田昭和の連結子会社という位置づけが株価評価に与えるディスカウントの解消を要求するケース。独立性強化・自社株買い・増配等の株主還元拡充を求める展開が想定される。業績過去最高更新と株価の大幅乖離が「重要提案行為」の論拠として機能しうる。

シナリオ B
業績継続成長と「沈黙の圧力」による株価回復
サイバーセキュリティ需要の構造的拡大が継続し、次期予想通りの25%増収・31%増益を達成することで株価が回復するケース。オールド・ピークが重要提案行為を実際には行使せず、「宣言による圧力」として機能させながら株価上昇益を実現する「沈黙の圧力」モデルの完成形となる。変更報告書での保有拡大がシナリオ現実化の指標となる。

シナリオ C
成長鈍化・株価低迷によるポジション縮小
高成長予想に対して実態が追いつかず、利益率が市場期待を下回るケース。流動性の低い小型グロース株という性格上、オールド・ピークの保有縮小局面では株価への下押し圧力が顕著となる。ビジネスブレイン太田昭和との関係が変化しない場合に、投資仮説の修正として保有を縮小するシナリオも考えられる。

論評
オールド・ピーク・グループがグローバルセキュリティエキスパートに5.14%の保有を公示した事実は、2025年のヘッジファンドランキングで世界トップクラスの成績を収めた香港の日本中小型株専門ファンドが、過去最高益更新中のサイバーセキュリティ企業の株価が52週高値比約60%下落するという業績と株価の大幅乖離を捉えてポジションを構築したことを意味しており、さらに過去の「純投資」スタンスから踏み込んで初回報告書の保有目的欄・重要提案行為等欄の両方に「株主価値の向上及び保全のため重要提案行為等を行うことがある」と明記したという転換は、オールド・ピークがこの銘柄に対して「沈黙の圧力」に留まらない積極的な関与を検討している可能性を示すシグナルとして市場は受け取るべきだ。60日ログに記録された対当取引(同日取得+処分)パターンは小型株市場の流動性を慎重に管理しながら目標水準に到達したことを示しており、ビジネスブレイン太田昭和との親子関係という少数株主保護の文脈での具体的な要求行動が生じるかどうかが、次の変更報告書とともにこの案件の性格を規定する最重要の観察指標となると見るのが自然だ。

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