いちご、Sansanに9.43%保有公示—ウエリントンと同日で合算14.51%超


大量保有報告書(特例対象) / 4443

いちごアセットマネジメント・インターナショナル、Sansanに9.43%の保有を初公示——ウエリントン3社と同日公示で外国人機関投資家合算14.51%超という異例の集中
「日本株の長期投資に特化した独立系機関投資家であり、投資先企業の中長期的な価値創造を尊重し、投資を通じて支えることにより、日本社会に貢献する」という哲学を保有目的に明記した異例の申告。9.43%という高い保有比率と、同日のウエリントン5.08%との合算14.51%超が示すSansanへの外国人機関投資家の厚い視線を分析する。
発行体 Sansan株式会社
証券コード 4443(東京証券取引所プライム市場)
提出者 いちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッド
報告義務発生日 2026年5月15日
提出日 2026年5月22日
根拠条文 金融商品取引法第27条の26第1項(特例)
発行済株式総数 126,780,856株(2026年5月15日現在)
直前報告書 該当なし(新規)

保有株数
11,954,000

保有割合
9.43%
発行済126,780,856株に対して

同日公示のウエリントンと合算
14.51%超
外国人機関投資家2社の合算比率

発行体・3Q調整後営業利益
60.9億円
前年同期比+131.1%

事実整理
提出者 いちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッド(Ichigo Asset Management International, Pte. Ltd.)
所在地 シンガポール(1 North Bridge Road, #06-08 High Street Centre)
設立年月日 2006年5月21日
代表者 ナヴェイド・エジャズ・ファルーキ(Partner/CEO)
事業内容 投資顧問業
保有目的 純投資。「日本株の長期投資に特化した独立系機関投資家であり、投資先企業の中長期的な価値創造を尊重し、投資を通じて支えることにより、日本社会に貢献することを投資理念としている」と明記
重要提案行為等 記載なし
保有株券等の数(総数) 11,954,000株
株券等保有割合 9.43%(発行済126,780,856株に対して)
担保契約等 いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドとの投資一任契約に基づく運用
連絡先 三浦法律事務所 弁護士 中村朋暉
本報告書の最大の注目点——2つの異例
①9.43%という突出した保有比率 ②保有目的欄への「投資哲学」の明記

本報告書には2つの際立った特徴がある。第一は保有割合9.43%という水準だ。今回のバッチで提出された同一発行体への大量保有報告書(ウエリントン5.08%)と合算すれば、2社合計で14.51%超という外国人機関投資家の集中保有が生じている。Sansan株式の単純計算で約6社に1株強を、2社の外国人機関投資家が保有していることになり、今後の株主総会での議決権行使・経営陣へのエンゲージメントにおいて実質的な影響力を持つ水準だ。

第二は保有目的欄の記載が「純投資」に留まらず、「日本株の長期投資に特化した独立系機関投資家であり、投資先企業の中長期的な価値創造を尊重し、投資を通じて支えることにより、日本社会に貢献することを投資理念としている」という企業哲学・使命宣言として展開されている点だ。大量保有報告書の法定様式において保有目的欄にこれほど詳細な投資哲学を記載するケースは稀であり、いちごが日本市場での長期的な信頼関係を意識した開示姿勢を取っていることを示している。

「いちごトラスト」との投資一任契約——保有の法的構造

担保契約等欄には「提出者は、発行者の株主であるいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(Ichigo Trust Pte. Ltd.)との間で投資一任契約を締結し、同社から投資運用に関する権限を委託されている」と記載されている。つまり、Sansanの株式を実際に保有しているのはいちごトラスト(シンガポールの信託会社)であり、いちごアセットマネジメント・インターナショナルは運用権限の受託者として報告義務を負う立場にある。いちごトラストは外国籍ユニット・トラストから100%出資を受けており、その背後には日本株長期投資ファンドへの出資者(機関投資家・個人投資家等)が存在する複層的な資金構造となっている。

取得主体の分析
いちごアセットマネジメント——Scott Callon会長が率いる日本株専門シンガポール系機関投資家

いちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッドは2006年にシンガポールで設立された投資顧問会社であり、日本の不動産・再生可能エネルギー・資産運用を展開するいちご株式会社(東証プライム:2337)グループの一員だ。いちごグループは「いちごアセットマネジメント株式会社(日本法人)」が投資助言を担い、「いちごアセットマネジメント・インターナショナル(シンガポール法人)」がグローバルからの資金を受け入れる体制を持つ。グループ代表のScott Callon会長(米国出身、日本在住)は日本株の長期投資に特化した独立系機関投資家としての活動で知られており、コーポレートガバナンス改革・資本効率向上を提唱する「建設的な株主」としての姿勢を長年一貫して維持してきた。

発行体の業績と「いちご×ウエリントン」同日公示の意味
5月15日:外国人機関投資家2社が同日にSansanへの5%超を同時公示

Sansanの直近業績(2026年5月期3Q累計)は売上392.6億(+26.1%増)・調整後営業利益60.9億(+131.1%増)・ARR459億・Bill One+40.7%という高成長フェーズにあることは前述の通りだ(詳細はウエリントン案件の記事を参照)。義務発生日(2026年5月15日)に、いちご9.43%とウエリントン5.08%という2社が独立に大量保有報告書を提出したという事実は偶然の一致として扱うべきだが、その結果として生じた合算14.51%超という外国人機関投資家の集中は、Sansanの株主構造に対して看過できない変化をもたらしている。

提出者 保有株数 保有割合 保有目的
いちごアセットマネジメント・インターナショナル 11,954,000 9.43% 純投資・長期・日本社会への貢献
ウエリントン3社(WM Japan主導) 6,442,958 5.08% 投資一任契約に基づく純投資
2社合算 18,396,958 14.51%
なぜSansanなのか——いちごの視点
「中長期的な価値創造を支える」という哲学とSansanの成長
ARR459億・Bill One+40.7%の成長継続
いちごの投資理念は「投資先企業の中長期的な価値創造を尊重し、投資を通じて支える」ことであり、ARRという長期的に複利で成長するストック型収益モデルを持つSansanは、この哲学と極めて整合性が高い投資対象だ。中計CAGR22〜27%という成長軌道が維持される限り、長期保有によって株主価値が継続的に増大する「ロングランの成長投資」として機能する。

9.43%という高比率の意味
ウエリントン5.08%の約1.9倍の規模
9.43%という保有割合はウエリントンの5.08%の約1.9倍であり、いちごにとってSansanへのコンビクション(確信度)の強さを示している。発行済126,780,856株の9.43%に相当する11,954,000株という絶対数は、いちごが積み上げてきた長期保有の規模の大きさを示している。この保有比率は臨時株主総会の招集請求(3%超)・株主提案権の行使(1%超)に十分な水準であり、将来のエンゲージメントにおける交渉力の基盤となっている。

BtoB SaaSと「日本社会への貢献」テーマ
インボイス・名刺DXという社会インフラ的事業
Sansanが展開する名刺管理「Sansan」・請求書DX「Bill One」・契約管理「Contract One」は、日本企業の業務プロセスのデジタル化を加速する社会インフラとしての性格を持つ。「日本社会への貢献」を投資理念として掲げるいちごにとって、電子インボイス・電子帳簿保存法という規制変化に対応した社会課題解決型SaaSへの投資は、財務リターンと社会的意義の両立という観点から最適な投資対象の一つと評価されていると考えるのが自然だ。

創業者経営とエンゲージメントの余地
寺田親弘氏による創業者経営への外部視線
いちごはコーポレートガバナンス改革・資本効率向上を重視するアクティブな長期株主として知られており、建設的なエンゲージメントを通じた企業価値向上へのコミットを持つ。重要提案行為の明記はないが、9.43%という保有比率はSansanの経営陣に対して情報開示の質・資本政策・取締役会の独立性について外部からの視線が高まることを意味する。

関係者構造
大量保有者(運用受託)
いちごアセットマネジメント・インターナショナル
シンガポール / 設立2006年5月
Scott Callon会長グループ
日本株長期投資に特化

実際の株式保有者
いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド
シンガポール / 外国籍ユニット・トラスト傘下
投資一任権限をいちごAMIに委託
連絡:三浦法律事務所 中村朋暉

発行体
Sansan株式会社(4443)
東証プライム / BtoB SaaS
ARR459億 / 調整後営業利益+131.1%
いちご9.43%+ウエリントン5.08%=14.51%超

シナリオ分析
Scenario 01 — 長期保有・エンゲージメント深化
中計達成を確認しながら対話型の長期株主として機能
いちごの「中長期的な価値創造を支える」哲学に沿い、Sansanの成長フェーズに伴走しながら議決権行使方針を通じてガバナンスの質の向上を促す長期保有シナリオ。中計目標(CAGR22〜27%・調整後営業利益率18〜23%)の達成が確認される局面でポジションを維持、または積み増す展開が想定される。ウエリントンとの合算14.51%という外国人機関投資家の厚みは、Sansan経営陣へのエンゲージメントの実効性を高める。

Scenario 02 — 保有比率のさらなる引き上げ
ARR600億目標への進捗確認後に追加取得
2027年5月期にSansanがARR600億・調整後営業利益率18〜23%という中計目標を達成した場合、いちごがコンビクションを高めてポジションを積み増すシナリオ。9.43%から10%超へのさらなる引き上げが生じれば、変更報告書の提出とともに「いちごのSansan評価の高さ」が市場に改めてシグナルとして届く。

Scenario 03 — 競合激化・成長鈍化による縮小
Bill One成長率の鈍化・中計未達で一部解消
請求書DX市場での競合激化によりBill Oneの成長率が市場予想を下回り、2027年5月期の中計目標達成が困難と判断される局面で、いちごがポジションを縮小するシナリオ。9.43%という高比率から5%台への低下が生じた場合、変更報告書での保有縮小は外国人機関投資家のセンチメント変化として市場が注目する局面となり得る。

論評

いちごアセットマネジメント・インターナショナルがSansanに9.43%の保有を公示した事実は、「日本株の長期投資に特化した独立系機関投資家として日本社会に貢献する」という投資哲学を保有目的欄に明記した異例の申告が示す通り、単なる財務投資を超えた深いコミットメントとして位置づけられる。同日のウエリントン3社(5.08%)との合算で14.51%超という外国人機関投資家の集中は、2026年5月期に調整後営業利益+131%という「収益レバレッジの転換点」を通過したSansanの中長期的な価値創造ストーリーに対して、二社の独立した判断が同じ答えに到達したという事実として読み解くことができ、今後の株主総会でのエンゲージメントと中計の進捗が、この集中投資の成否を分ける最初の分岐点となると見るのが自然だ。

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