
中西宏之と松田学“防災利権”の闇を追う
国家を語る詐欺が、ここまで堂々と行われていたとは──。
防災教育という公益的なテーマを盾に、国家予算や政治利権への“関与”を匂わせながら、全国の若手経営者や個人投資家から8億円超の出資金を集めた男がいる。
名は中西宏之。千葉科学大学での講師歴や著書出版を盾に、あたかも公的な立場にあるかのように振る舞い、人々の「社会貢献したい」という想いに付け込んだ。
しかし、彼の背後にいたのは──元財務省官僚であり、後に参政党の初代代表となる松田学であった。
国家の利権プロジェクト
松田の“国家権力の箔”を全面に利用し、まるで“国家の利権プロジェクト”であるかのように演出されたこのスキームは、政治団体の口座を通じて金が流れ、“合法的”に消されていったとされる。
この記事では、中西と松田が構築した詐欺的スキームの構造を、被害者証言・公開資料・映像記録・登記情報をもとに徹底的に洗い出し、「参政党」自体がスキームの舞台装置となっていた疑惑を明らかにする。
中西宏之とは何者か?
防災を語る“信用詐欺師”の正体
中西宏之──千葉科学大学の元防災講師、著書『震度7の生存確率』の執筆者、防災教育を掲げる活動家。
だが、その“表の顔”とは裏腹に、彼の活動は出資詐欺の温床であった。防災、国家利権、補助金、そして政治──こうした社会的信頼を引き寄せやすいテーマを巧みに用い、中西は数億円規模の資金を集めていた。
被害者らの証言によれば、出資話は「日本の防災意識は世界で最も低い」「国防に関わるレベルの重要政策」といった大義をもって語られていた。
中西は「民間緊急避難場所を全国に設置し、防災に関する資格制度を新設する」と主張。
ベンチャー経営者を中心に、「国の補助金が付く」「元財務省OBとつながっているから安心」「今なら国の利権に乗れる」と言葉巧みに出資を募った。
高利の私募案件
提示されたスキームはこうだ。
一口500万円。1年後に元本返済、さらに数十万円規模の利息付きで返金される──という“高利の私募案件”である。
しかもそれは“国家の利権案件”であるという箔がついていた。「これは事業投資ではなく、国家の予算に乗る案件だ。金融商品取引法には抵触しない」と説明されたという。
さらに中西は、「かつて癌を患って人生を諦めたが、日本のために人生を賭けたい」と語るなど、“人生の再出発”を強調。
まるで自己啓発セミナーのような空気を演出し、出資者に対して「これは儲け話ではなく、社会貢献だ」と印象づけていた。
実際、彼は防災教育分野で一時的に公的ポジションを得ており、千葉科学大学の資料や過去の学会プログラムにも登壇履歴が存在する。
また、Amazonでも彼の書籍は今なお入手可能であり、こうした“実績”が彼の信用を補強する役割を果たしていた。
だが、問題はこの“信用”の使い方だった。
その信用は、後に出てくる松田学(元財務官僚・参政党初代代表)と組むことによって、さらに強固な“国家の装い”をまとうことになる。
中西は、ただの詐欺師ではない。
「国家のため」「防災のため」という社会的に疑われにくい大義を前面に出し、人々の正義感や不安につけ込んだ“国家ブランド詐欺”の演出者だった。
元財務省OB・松田学の関与
“信用の担保”が詐欺に使われた日
中西宏之の詐欺スキームが“国家利権案件”として信じられた最大の理由──それは、松田学という存在が背後にいたからに他ならない。
松田は、元財務省官僚であり、東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。後に衆議院議員となり、2022年から2023年にかけては参政党の初代代表を務めた人物である。
この肩書きは、“国家の箔”として絶大な影響力を持ち、一般の出資者や若手経営者からすれば、「この人が関わっているなら、安心だ」と思わせるに十分な“信用装置”となった。
中西はこの“松田の名前”を、詐欺的スキームの中でフルに活用した。
証言によれば、「松田さんと裏で話はついている」「国の予算が付くことになっている」などと語り、防災関連の資格制度導入や民間避難所の設置に数十億円単位の予算が動くという“確約”を匂わせていた。
実際、中西は松田学が代表を務める「松田政策研究所」の研究員という立場を名乗っており、YouTubeでは松田本人と共演した防災対談動画が複数確認されている。
その中で中西は、「今後、防災教育を国家戦略として推進すべきだ」などと語り、あたかも政策実現の一端を担っているような演出を行っていた。
特に象徴的なのは、松田が共演動画内で身に着けていたロレックス・デイトナ(116520)の腕時計だ。
被害者の一人は、「国家利権を背負う人間に相応しい、威圧感すら感じる演出だった」と語る。
権威の演出と信用の仮装
それこそがこの詐欺スキームの中核にあった。
中西と松田の関係性は、単なる紹介や講演の共演ではない。
中西自身が語ったところによれば、「松田さんとは旧知の間柄で、国家予算を防災に振り向けることについて話はついている」「財務省の中でも、OBこそが本当に予算を動かせる存在」だと説明していた。
だが実際には、そうした“国家的裏付け”の実態は存在しなかった。
松田自身が公的にそのような予算配分を動かした形跡はなく、出資者への返済も滞ったまま、スキームは“時間稼ぎ”と“言い訳”によって延命され続けた。
にもかかわらず、松田がこの件に関して一切説明責任を果たしていないのは、不自然極まりない。
さらに被害者は、こう語っている。
「中西は“松田の応援資金に使った”と言っていた。もしそれが本当なら、松田氏には政治資金規正法上の説明責任があるはずだ。なのに、誰もこの問題を表で取り上げようとしない。」
松田が“信用の担保”として使われたのか、それとも“共犯”として協力していたのか──
真相を解く鍵は、この後に語られる「参政党」という舞台装置の実態にある。
参政党の政治資金と“闇のパイプライン”
国家利権案件
中西宏之が語っていた“国家利権案件”は、単なる誇張では終わらなかった。
彼が頻繁に口にしたのは、「松田さんは今、参政党を動かしている」「政治団体の口座を通せば、合法的に金は処理できる」という、あまりにも具体的な資金の“逃し方”だった。
参政党の初代代表
松田学は、2022年7月から2023年8月まで参政党の初代代表を務めている。
保守系市民団体の流れを汲みつつ、草の根政治を掲げて立ち上がったこの新興政党は、一部の政治的に熱量の高い層にとって“純粋な志の政党”として映っていた。
だが、その「政治という看板」は、詐欺スキームにとっては格好の“隠れ蓑”ともなった。
被害者証言によれば、仲西はこう語っていたという。
「松田さんの名前を出せば出資者は安心する。政治団体の口座を経由すれば“税金もかからずに処理”できる。金の流れも表に出にくい。」
この発言は事実か。
証拠となる直接的な送金記録は今のところ表に出ていない。
だが、参政党の政治資金収支報告書には、2020年からの数年間で総額8,600万円以上の寄附が記録されており、その中には個人名の特定が困難な形での入金も含まれている。
また、松田が個人で主宰する「松田政策研究所」では、YouTubeの広告収入名義で1,300万円超を得ていたとする報道も存在する。
問題は、その資金の出所と使途の透明性にある。
出資者が中西に預けた資金の一部が、「松田の応援資金として使われた」と報告された以上、
仮にその資金が政治団体を経由していたとすれば、参政党、あるいは関連団体の政治資金として何らかの記録が残っているはずだ。
しかし、現時点で松田学氏、または参政党側から明確な否定も、説明責任も一切果たされていない。
グレーゾーンの合法化
さらに重要なのは、この構造が“グレーゾーンの合法化”という形で設計されていた可能性である。
契約書を交わし、定例の“報告会”を開き、政治団体の口座に送金する。
そのすべてが、“詐欺ではないように見せる”仕掛けとして機能していたとすれば、もはやこれは単なる中西の個人詐欺ではない。
政治と行政の信頼を悪用し、制度の隙間を突いた“制度内詐欺”の一種である。
そして、最も重い問いはここにある。
「参政党は、本当にこのスキームに無関係だったのか?」
この問いを放置する限り、政治と詐欺の境界線は永遠に曖昧なままだ。
松田学氏、そして参政党には、被害者の声に応える説明責任がある。
被害者たちの声
なぜ誰も止められなかったのか
中西宏之が集めた資金の総額は、証言ベースで8億円を超える。
「国家利権に関与できる」「税金対策にもなる」「松田学が関わっている」という触れ込みに、経営者、投資家、さらには大学生までが巻き込まれた。
ある出資者は語る。
「利息付きで返ってくるって言われたし、国家予算がつく事業だと聞かされた。防災っていう社会貢献の要素にも惹かれた。税理士から“節税にもなるかもしれない”と背中を押された。」
契約書も交わされた。毎月の「返済報告会」も行われた。
しかし、返済は行われなかった。
ある時は、「税金の支払いが多すぎて今は手が回らない」と言い訳し、
またある時は、「親が入院した」「松田さんの選挙支援が立て込んでいる」と“多忙”を理由に責任を回避した。
それでも中西は、「返す意志はある」と言い続け、詐欺罪の成立を回避するライン上を慎重に歩み続けた。
ある被害者は、直接事務所を訪れた際のことをこう振り返る。
「返金の話を切り出すと、“礼節がなっていない奴にはそれ相応の対応しかできない”と逆ギレされた。契約書を盾に、“気に入らないなら弁護士でも警察でも行け”と言い放った。」
これは明確な“防御戦術”であり、「飛ばずに対応し続ければ詐欺ではない」という法的グレーゾーンを理解した上での行動である。
中西は、法の穴と“相手の諦め”に賭けていた。
実際、被害者の多くは泣き寝入りしている。
「もう5年も経っている。弁護士を入れても、契約書がある限り刑事で立証するのは難しい。数百万円程度では警察も動かない。だからこそ、彼は今も堂々と生きている。」
松田学”という後ろ盾の存在
さらに見逃せないのは、“松田学”という後ろ盾の存在が、出資者の“疑念”を封じていたという事実だ。
「最初は怪しいかも、と思った。でも、YouTubeで松田さんと一緒に出ている動画を見て、“本当に国家レベルの案件なんだ”と安心してしまった。」
この構造は、「信用の錯覚」によって成り立っていた。
そして、その信用は“国家”や“政治”によって演出されていた。
防災、社会貢献、国のため──そういった“善意の仮面”をかぶったスキームを前に、疑問を抱いた者も、声を上げることができなかった。
ジュピターコイン、バイアグラ、北海道不動産
資金の行方と周辺の闇
被害者から集められた総額8億円以上の出資金。
中西宏之はその金の使途を明かそうとはせず、「半分は自分の事業拡大、残りは松田さんの応援資金や諸経費」と曖昧に語っていた。
だが実際、資金は“国家利権”とは無関係なところへと流れていた可能性が高い。
① ジュピターコイン(JPT)──“仮想通貨詐欺”との接点
被害者証言によれば、中西が関与していたのは「防災ビジネス」だけではない。
後になって明らかになったのは、松田学自身が関わっていたとされる仮想通貨プロジェクト「ジュピターコイン(JPT)」との接点だった。
JPTは、GACKTコイン(SPINDLE)に似た“中身のないトークン”だとされ、週刊新潮やFACTAなど複数メディアでも問題視された経緯がある【出典】。
このプロジェクトにも松田が広告塔として関与し、YouTubeなどを通じて「国家が変わる」「通貨が変わる」といった未来像を語っていた。
仮想通貨という極めて透明性の低い領域と、防災・国家利権を語る実業がクロスした地点に、“洗浄された金”の行き先があると疑われる。
② 北海道不動産──抵当権が設定された“物件”
虎ノ門法律事務所が確認した情報によれば、中西が代表を務める株式会社保険研究所名義で、北海道に8000万〜1億円規模の不動産が存在。
その物件には現在、渋谷に本社を構えるローン会社「LENDEX LOAN」が抵当権を設定している。
これはつまり、出資金の一部が不動産担保ビジネスに転用された可能性を示唆している。
中西が金を“個人資産化”し、それを担保にローン事業に関わっていたのではないかという疑念だ。
③ 千代田区の「防災教育オフィス」と私物化の兆候
現在、中西は「株式会社保険研究所」がかつて使用していた千代田区一番町のオフィスに頻繁に出入りしているとされる。
だがその事務所では、バイアグラを法人名義のPCで購入していた履歴も確認されており、活動拠点が実質的に“私物化”されていた実態が伺える。
被害者の一人は、こう憤る。
「真面目な顔して“国のため”だなんて語っていた奴が、裏では女と遊びまくってる。しかもその金は、俺たちが信じて預けた金だったはずだ。」
国家の信用が詐欺に使われたという事実
この事件の本質は、“中西という詐欺師”の問題では終わらない。
元財務官僚という肩書き、“国家予算に関与できる”という虚偽の信用、そして参政党という政党の看板──。
日本社会における「国家的信用」が、ここまで露骨に詐欺に使われた例は他に類を見ない。
にもかかわらず、司法も政治もこの問題に沈黙したままだ。
契約書があるから、飛んでいないから、被害届が少ないから──それらが“見て見ぬふり”の理由になるのであれば、この国では政治と詐欺の境界線など初めから存在しない。
「参政党は、このスキームと本当に無関係だったのか?」
「松田学は、なぜ沈黙しているのか?」
「この8億円は、誰の懐に入ったのか?」
この問いに明確な答えが出るまで、我々は追及の手を止めない。
政治×防災×詐欺
構造的に生まれた“国家ブランド詐欺”
この詐欺スキームが巧妙だったのは、それが単なる「詐欺師による金集め」ではなかったことだ。
関係者の証言と構造を精査すればするほど明らかになるのは、“国家ブランド”を装いながら制度的グレーゾーンの中で構築された、構造的な詐欺モデルだったという現実である。
国家を装った“正義の装置”
詐欺スキームの外観は、社会正義そのものだった。
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防災という公益性の高いテーマ
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民間避難所や国家資格制度の創設という制度提案
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元財務省官僚という“行政の顔”
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参政党という“政治の看板”
これらが連動することで、出資者の心理的ハードルは著しく下がった。
「これは利権ではなく、社会貢献だ」
「これは詐欺ではなく、制度の先取りだ」
そう思い込ませるに十分な物語性と国家性が、この詐欺には仕込まれていた。
なぜ誰も止められなかったのか──“構造的正当化”の罠
このスキームには「詐欺には見えない」仕組みが随所にある。
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返金約束と利息付き契約書 → 民事債権化し、詐欺要件を回避
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月1回の報告会 → 責任を取っている“体裁”の維持
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政治団体口座の活用 → 金の流れを“合法”と錯覚させる
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「飛ばずに居続ける」 → 刑事告訴リスクを避ける防衛策
つまり、中西が行ったのは、制度のグレーゾーンを使った“制度内詐欺”である。
これが可能だったのは、政治・行政・法制度のいずれも、この構造に対して無力だったからだ。
松田学と参政党──“無責任な信用”の構図
このスキームの核心にいたのが、松田学という元財務省官僚の存在である。
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「予算を動かせるのは財務省OB」
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「松田さんがついているから大丈夫」
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「参政党が応援している」
被害者の多くは、松田の名前と政党の存在によって疑念を封じた。
つまり、信用が“内容”ではなく“肩書”によって形成されたのである。
政治家や政党が、自らの名前を貸すことで詐欺の信用装置になる──
これは日本の民主制度そのものの危機と言っても過言ではない。
国家ブランド詐欺とは何か
この事案は、単なる個人詐欺ではない。
それは「国家の信用」「行政の肩書」「政党の顔」「社会正義」を材料に構成された、“国家ブランド詐欺”の完成形である。
しかもその構造は、今も制度上、完全には否定されていない。
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政治団体口座の使途に関する監査は極めて緩い
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契約書がある限り、警察は動きにくい
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政治家個人に説明責任を問うルールは存在しない
この状況を変えなければ、「中西×松田モデル」は再び、別の名で、別の政党で、別のテーマで出現するだろう。
“松田×中西モデル”の再発を防げるのか
本記事で明らかになった構造は、単なる人物間の癒着ではない。
それは、制度の盲点・国家の看板・政治の無責任体制が組み合わさることで初めて成立した“制度温存型詐欺”である。
問題の核心は、中西宏之や松田学という個人の悪質性ではなく、
そのような人物が国家の名を語り、行政の信用を演出し、政治団体の口座を資金の逃げ道に使えた構造そのものにある。
政治は“信用の装置”であってはならない
「松田学が言っているのなら大丈夫だと思った」──この言葉は、本件被害者の共通した動機である。
彼が元財務官僚であり、政党代表であり、知名度があり、政策提言を行っていたことが、“スキーム全体を正当化する盾”となっていた。
政治家は信用を生む存在ではあるべきだが、その信用に説明責任を伴わせなければ、それは凶器にもなる。
松田学氏は、これまで中西との関係や、スキームへの関与について明確な説明を一切行っていない。
その沈黙が、どれほどの被害者にとって二次加害になっているかを、本人は自覚しているのだろうか。
被害者が泣き寝入りする国に、正義はあるか?
返済されていない8億円超の出資金。
契約書があるから警察は動かない。政治家は何も語らない。政党は関知しない。
この三重の沈黙が生んでいるのは、「誰も責任を取らない構造」だ。
そしてその構造こそが、次の“制度内詐欺”を生む温床になる。
正義とは、誰かが裁かれることではない。
正義とは、同じことが二度と起きないように、構造が変わることである。
論評社はこの事件を、単なる「詐欺の告発」ではなく、制度の問い直しとして扱う。
記録されることが、抑止力になる
政治団体への制度改正・監査義務化の提案
政治団体口座を経由した金銭の流れに対する年次監査制度
出資勧誘に関わる「政治家・元官僚」の関与履歴登録制度
公的肩書の商業利用に対する制限規定の創設
こうした構造的対策を講じなければ、“松田×中西モデル”は形を変えて何度でも現れる。
詐欺師は逃げる。政治家は黙る。政党は関係ないと切り捨てる。
だが、記録され、検索され、記事として残ることは、それ自体が社会的制裁であり、抑止力となる。
論評社は、今後もこの構造の監視を続け、必要に応じて追加の取材・公開質問・告発記事の発信を行っていく。
この国の“看板”が詐欺に使われたなら、その責任は、看板を掲げた側にもある。