マラソン・アセット、セガサミーHDに5.13%保有公示—英系長期投資


大量保有報告書(特例対象) / 6460

マラソン・アセット・マネジメント、セガサミーホールディングスに5.13%の保有を初公示——Rovio減損で純損失に転落した局面を「キャピタル・サイクル」の買い場と捉えた逆張り長期投資
2026年3月期に売上+13.7%の増収を達成しながら純損失57億円という「増収・純損失」の構図は、Rovio関連を中心とした一時的減損によるものだ。設立から37年以上の実績を持つ英国老舗独立系運用会社が、株価が年初来高値比約36%下落した局面でポジションを構築した事実の意味を読み解く。
発行体 セガサミーホールディングス株式会社
証券コード 6460(東京証券取引所プライム市場)
提出者 Marathon Asset Management Limited
報告義務発生日 2026年5月15日
提出日 2026年5月20日
根拠条文 金融商品取引法第27条の26第1項(特例対象株券等)
発行済株式総数 213,545,376株(2026年5月15日現在)
直前報告書 該当なし(新規)

保有株数
10,954,800

保有割合
5.13%
発行済213,545,376株に対して

発行体・直近売上高
4,875億円
2026年3月期 前期比+13.7%

株価(義務発生日前後)
約2,200円台
年初来高値3,683円比▲36%

事実整理
提出者 Marathon Asset Management Limited(英国ロンドン、EDINET登記上の設立2019年7月31日。実質的な前身法人は1986年設立)
代表者 James Bennett(チーフ・リスク・オフィサー兼チーフ・コンプライアンス・オフィサー)
事業内容 投資一任業。運用資産約5.6兆円、日本株保有残高は約1.5兆円以上とされる
投資哲学 キャピタル・サイクル哲学(Capital Cycle Philosophy)に基づく長期逆張り投資
保有目的 長期投資(投資一任契約に基づく顧客の資産運用のため)
重要提案行為等 記載なし
保有株券等の数(総数) 10,954,800株
株券等保有割合 5.13%(発行済213,545,376株に対して)
取得資金等 開示なし(特例対象のため)
担保契約等 なし
連絡先 長島・大野・常松法律事務所 弁護士 金田裕己
発行体の業績と株価——「増収・純損失」という一時的歪みが生んだ割安局面
2026年3月期:売上+13.7%増収・営業利益▲2.1%・純損失57億円

マラソンが義務発生日(2026年5月15日)に5%超を記録した時点は、セガサミーHDが前日(5月12日)に2026年3月期の本決算を開示した直後にあたる。その内容は売上高4,875億円(前期比+13.7%増)と増収を達成しながら、営業利益471億円(同▲2.1%減)、そして純損失57億円という「増収・純損失」の構図だった。純損失の主因はRovio(フィンランド・Angry Birdsのゲームデベロッパー)の減損損失計上であり、調整後EBITDAも1,666億円(前期比▲73.3%減)と大幅悪化している。

指標 2025年3月期(実績) 2026年3月期(実績) 前期比
売上高 4,286億円 4,875億円 +13.7%
営業利益 481億円 471億円 ▲2.1%
純利益 +(黒字) ▲57.5億円 純損失転落
調整後EBITDA 6,228億円 1,666億円 ▲73.3%
ROE(2025年3月期) 12.2%(目標ROE10%超を超過)
株価と業績の乖離——マラソンのエントリー根拠

セガサミーHDの株価は2025年6月に年初来高値3,683円を付けた後、下落を続け2026年1月には年初来安値2,413円に達した。義務発生日(5月15日)前後の水準は約2,200〜2,300円台と推定され、高値比で約36%の下落となっている。純損失の主因がRovio等の一時的減損であることは、「正常化後の収益力」と「現在の株価」の間に投資機会を見出すキャピタル・サイクル型投資家にとって典型的な参入根拠となる。アナリストの平均目標株価は3,431円(2026年2月時点)と、義務発生日前後の株価から約44%の上値余地を示唆しており、バリュエーションの割安感は数値でも裏付けられる。

2027年3月期予想は売上高増収・営業減益という二次的な不透明要素も存在するが、マラソンの長期投資哲学は短期の業績変動よりも3〜5年単位の事業収益力の正常化を重視する。自己資本比率59.1%(2025年3月期末)というネットキャッシュを維持する強固な財務基盤と、314億円規模の株主還元実績(2026年3月期)がその基盤として機能していると考えるのが自然だ。

取得主体の分析
マラソン・アセット・マネジメント——37年の歴史を持つ「キャピタル・サイクル」投資の老舗

Marathon Asset Management Limitedの実質的な前身組織は1986年にロンドンで設立された独立系資産運用会社であり、EDINET提出書類上の「設立2019年7月31日」は英国の法人再編に伴う登記上の日付に過ぎない。运用資産は約5.6兆円(374億ドル)で、日本株を約1.5兆円以上保有するアジア最大級の独立系グローバル株式運用会社の一つとして市場関係者に認知されている。JR東日本・JR西日本等のインフラ系大型株での保有実績も確認されており、日本市場では「Marathon-London」の名称で知られる。

マラソンの最大の特徴はキャピタル・サイクル哲学(Capital Cycle Philosophy)にある。個別企業の利益予想よりも産業全体の資本投下サイクル——過剰投資期・調整期・回復期——を俯瞰し、業界全体が悲観に傾き新規投資が抑制され始めた局面で集中的にポジションを構築するという逆張り長期投資だ。この手法は「伝統的なバリュー投資でも成長株投資でもない」と自ら標榜しており、3〜5年単位の超長期保有を前提とした運用スタイルと整合する。「長期投資(投資一任契約に基づく顧客の資産運用のため)」という今回の保有目的記載は、このマラソン固有の哲学を簡潔に示すものだ。

保有目的の「比較軸」——同期間の他案件との文言対比

本報告書の義務発生日(5月15日)と近接する期間に提出された他の大量保有報告書と保有目的を比較すると、アクティビスト色の段階が鮮明になる。オアシス・マネジメント(市光工業等)は「ポートフォリオ投資および重要提案行為」、アセンダー・キャピタル(アイドマHD)は「重要提案行為等を行うこと」と断言形式を採用している。これに対し、マラソンの「長期投資(投資一任契約に基づく顧客の資産運用のため)」という記述は経営介入意図を一切持たない純粋な長期バリュー投資の宣言として、スペクトルの最も消極的な端に位置する。GMO(美津濃)の「状況に応じて重要提案行為等を行うこともありうる」という条件付き中間形態とも性格が異なり、マラソンが経営陣との対話よりも市場リターンそのものに集中する運用姿勢を持つことを示している。

なぜセガサミーHDなのか——キャピタル・サイクルの三角形
一時的減損 vs 事業収益力
Rovio減損は非経常項目
純損失57億円の主因であるRovio(Angry Birds開発元)関連の減損損失は、M&Aに伴う一時的な会計上の費用処理であり、セガサミーHDの日常的な営業利益創出能力とは直接的な関係を持たない。マラソンのキャピタル・サイクル分析では、この種の「一時的悪化による株価下落」こそが参入機会の本体として認識される傾向がある。

遊技機事業の安定CF
パチスロ・パチンコが利益基盤
2026年3月期に遊技機事業は好調に推移し、規制緩和に伴う新機種投入の恩恵を受けた。パチスロ・パチンコ事業は規制環境に左右されるものの、ライフサイクルが安定したキャッシュフロー源として機能する。314億円の株主還元(配当+自己株取得)を支えるこのCF創出能力は、長期保有投資家にとっての下値支持材料となり得る。

ゲーミング事業の成長ポテンシャル
韓国パラダイスシティ等が牽引
韓国・パラダイスシティの好調とM&Aによるオンラインゲーミング分野への進出は、次の成長ドライバーとして期待される。日本のIR(統合型リゾート)についても大阪・和歌山での計画が進行中であり、実現すれば長期的な増収要因となる。マラソンが3〜5年単位で見るとき、このIR付加価値が現在の株価に十分織り込まれていないという判断が参入判断に影響した可能性がある。

中計ROE目標と株主還元
ROE10%超・EBITDA2,300億円超を目指す
2025〜2027年3月期の3カ年中計では、調整後EBITDA合計2,300億円超とROE平均10%超を目標とする。2025年3月期にROE12.2%を達成した実績を持つ経営チームが、一時的な減損処理後に正常な収益水準へ回帰できるかどうかが、マラソンの投資仮説の核心となっていると見るのが自然だ。

関係者構造
大量保有者
Marathon Asset Management Limited
英国ロンドン / 1986年創業・約37年の運用実績
AUM約5.6兆円・日本株1.5兆円以上保有
キャピタル・サイクル哲学・長期逆張り

保有形態
投資一任契約を通じた顧客資産運用
取得資金:開示なし(特例)
過去保有実績:JR東日本・JR西日本等
代理人:長島・大野・常松 金田裕己

発行体
セガサミーホールディングス(6460)
東証プライム / エンタメ・遊技機・ゲーミング
2026年3月期 売上4,875億 純損失57億
発行済株式:213,545,376株

シナリオ分析
Scenario 01 — 正常化・株価回復
減損一巡後の業績正常化と株価のアナリスト目標値への収束
Rovio等の一時的減損が一巡し、2027〜2028年3月期に遊技機・ゲーミング・エンタメの3事業が安定的に貢献する形で純利益が黒字回帰するシナリオ。アナリスト平均目標株価3,431円への収束は、現在株価からの44%上昇に相当する。マラソンにとってはキャピタル・サイクルの「正常化局面」で純粋に市場リターンを享受する最も想定通りの展開となる。

Scenario 02 — IR・ゲーミング加速
日本IRの本格稼動と韓国・東南アジアカジノ事業の拡大
大阪IRが計画通り進展し、パラダイスシティを含む海外ゲーミング事業が想定以上の収益貢献をするシナリオ。ゲーミング事業が黒字化・拡大に転じることでコングロマリット・ディスカウントが解消に向かい、株価が目標水準を大きく上回る展開が生じ得る。マラソンが変更報告書で保有を積み増す局面が生じる可能性がある。

Scenario 03 — 投資仮説の修正
遊技機規制強化・IPビジネス低迷による撤退
パチスロ・パチンコへの規制強化が再強化され、同時にゲームタイトルのヒット不振が続くシナリオ。マラソンが「一時的悪化」と見ていた要因が「構造的悪化」と判断を改め、キャピタル・サイクル分析の前提が崩れたとして保有を縮小する。変更報告書での5%未満への低下が、同社の投資仮説修正のシグナルとなり得る。

論評

Marathon Asset Management Limitedがセガサミーホールディングスに5.13%の保有を初公示した事実は、1986年創業・AUM約5.6兆円の英国独立系長期運用会社が、Rovio等の一時的減損によって純損失に転落しながらも営業利益471億円・売上高+13.7%増収という実質的な事業収益力を維持する発行体の「正常化後の価値」に着目し、株価が年初来高値比約36%下落した局面を典型的な「キャピタル・サイクルの買い場」として捉えた逆張り長期投資として位置づけられる。重要提案行為を明記しない純粋な特例報告という形式は経営介入意図の不在を示すが、外国人機関投資家として5%超を保有する事実そのものが株主構成の厚みを増す効果を持ち、今後の変更報告書の動向——保有継続か積み増しか——がマラソンのコンビクション強度を測る最初の定量指標となると見るのが自然だ。

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